「がん家系」に生まれて

今死んでも後悔はない。ただ一つの心残りは夫のこと

モデル・美肌温泉家の朝香さん
モデル・美肌温泉家の朝香さん(C)日刊ゲンダイ

 大腸がんと告げられ、余命を考えはしましたが、「今死んでも後悔はない」という気持ちもありました。これまでそういう生き方をしてきましたから。

 ただ一つだけ心残りだったのが、主人を残していくこと。母が旅立っていくのを見ていましたから、残された側の気持ちがすごく分かる。私は死ぬのが怖くないしつらくないけど、主人を残していくのだけはつらかった。

 大腸内視鏡検査で大腸がんかもしれないと言われ、細胞診の結果を待つまでの4日間、私は「結果が早く分かってスッキリしたい」という気持ちがありました。でも、主人は私を支えようとしっかりしているけど、かなりショックを受けているのが私には分かっていました。「金曜日が永遠に来なければいいのに」と口にしたこともありました。

 ただ、最初にがんかもしれないと言われ病院を出た時、午前中で、すがすがしい天気で、冬で、空気が澄んでいて、太陽も出ていて、空を見上げていたら、「私、いけそうな気がする。勝てそうな気がする」と感じたんです。根拠はないんですけどね。

 あとは、1月19日のがんセンターへの入院前、寝る時に「頑張ってくるから」と主人に言ったら、絞り出すような声で「本当に頑張ってくれ」と言われたのも忘れられない。主人がいなかったら、頑張れなかったですね。

 入院した日から、いきなり絶食に入りました。「それなら朝、お腹いっぱい食べてくるんだった、先に言っといてよ」なんて思っていました。

 手術後は、2泊3日で集中治療室に入り、おならが出るまで絶食。普通は病室に戻ったその日におならが出るそうですが、私は術後4日、つまり入院してから6日かかりました。食いしん坊の私にとっては、6日間、何も食べられないのが、とにかくつらかったです。

 集中治療室に入っている間は、痛みが強かった。傷が痛いのではなく、腸の動きに敏感になっていたのが原因だそうです。この時に手術の経緯を簡単に聞いたのですが、ほぼモルヒネで眠っており、意識も朦朧としていたので、記憶があいまいです。

 きちんと説明を受けたのは、退院して1回目の通院の時。ステージ3か4で肺や肝臓に転移があるかもしれないと手術前には言われていましたが、転移はなく、ステージ2。私くらいのがんの大きさだと転移していておかしくないのですが、リンチ症候群は予後がいいそうなんです。だから、転移もなかった。 

 切除したがんの写真は、父と主人の母が私には見せないようにと言っていたそうなんですが、主人が「どんな結果であっても知りたいでしょ」と、後で見せてくれました。リンチ症候群かどうかの遺伝子検査は、「デリケートなものなのでどうしますか?」と聞かれたのですが、私ははっきりした性格なので、「やります!」と。

 これに関しても、主人からは「受けたいんでしょ」。遺伝子外来に行き、口頭で家族の既往歴を説明したら、すぐに「96%くらいの確率でリンチ症候群ですね」と言われました。

▽1974年8月生まれ。44歳。北海道出身。モデルとしてCMなどに多数出演。現在は温泉観光実践士協会理事、温泉ソムリエアンバサダーも務める。

関連記事