日本人の失明原因4位「加齢黄斑変性」の知られざる深刻さ

50歳以上の1%が発症
50歳以上の1%が発症(C)日刊ゲンダイ

 加齢黄斑変性は「見たい部分が歪んで見える」「見たい部分が黒っぽくなって見える」病気。欧米では成人の失明原因の第1位、日本では第4位だ。対策はあるのか?

 加齢黄斑変性を発症した有名人といえば、野球解説者の江本孟紀氏(71)だ。本人が雑誌に語った内容によれば、異変を感じたのは2010年。両目で見た時は問題なかったが、左目だけで見ると直線が丸みを帯びて見えたという。

 慶応義塾大学医学部眼科学教室専任講師の小沢洋子医師は、加齢黄斑変性の臨床の専門家。高度な治療を求めて全国から大勢の患者が診察に訪れるが、その中にはすでに症状が進行し、日常生活に不便を抱える患者も少なくない。

「ホームページの中には、加齢黄斑変性の見え方がそんなに深刻に思えないものもありますが、海外では違います。可愛い子供の顔が黒くなって見えない。患者さんからは『先生の姿は分かるのですが、表情が見えません』『読もうと思った新聞の文字が見えず読めません』などと言われます」(小沢医師=以下同)

 見え方に変化が起こる理由は、網膜の中心部にある「黄斑」という部分に障害が生じるから。原因は長年にわたる過剰な酸化ストレスの蓄積と慢性炎症だ。加齢黄斑変性には2種類あり、酸化ストレスと慢性炎症で出来た新生血管(異常血管)から出血などが起こるのが「滲出型」。一方、酸化ストレスと慢性炎症によるダメージで細胞が萎縮するのが「萎縮型」だ。

「萎縮型には、治療法がありません。滲出型であれば、加齢黄斑変性の進行を遅らせる抗VEGF作用を持つ薬剤を眼球に注射する抗血管内皮増殖因子療法が、今の中心的治療です」

■最も重要な「予防」2つの方法

 ただし、すでに障害された視力は戻らない。萎縮型はもちろん、滲出型であっても、最も重要なのは「予防」だ。

 第1に、危険因子から遠ざかること。酸化ストレスにつながる喫煙、メタボリックシンドローム、生活習慣病、光に当たりすぎる……などを避ける。酸化ストレスが蓄積すると炎症が起こる、炎症が起こると酸化ストレスが蓄積するという悪循環が起こるので、これを断ち切る。

 第2に、抗酸化サプリの継続摂取だ。やはり悪循環を断ち切ることにつながる。

 アメリカの臨床試験で約4000人を集めて5年間、「プラセボ(偽薬)」「マルチビタミン」「亜鉛」「マルチビタミンと亜鉛」をそれぞれ摂取してもらい、各群を調べたところ、「マルチビタミンと亜鉛群」は「偽薬群」に比べて25%発症率が低かった。さらに別の約4000人に、マルチビタミンと亜鉛のほかにルテイン・ゼアキサンチンを加えたところ、加齢黄斑変性の発症率が18%低かった。

「これら2つの研究で推奨されている抗酸化サプリメントが、ビタミンC・E、亜鉛、カロテノイドの一種であるルテイン・ゼアキサンチンです。1回目の研究では、同じくカロテノイドの一種、βカロテンが使われたのですが、別の研究でβカロテンが喫煙者に対して肺がんリスクを上げるという結果が出たので、ルテイン・ゼアキサンチンに変更になりました」

 世界的な医学誌ニューイングランドジャーナルでも、ハーバード大学のグループがこれらサプリメントのガイドライン化について発表しているという。

 50歳以上の1%が加齢黄斑変性を発症するといわれている。

 該当する年齢なら、予防策としてサプリの活用を検討してはどうか。

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