実は希林さんは最初の摘出手術の後に受けたホルモン療法を副作用のつらさから途中でやめた。その後の治療の柱にしたのが、放射線のピンポイント照射だ。
東大病院放射線科准教授の中川恵一氏が言う。
「推測ですが、ホルモン療法や化学療法、最新の分子標的薬などの薬物療法を完遂していたら、ひょっとするとより延命できたかもしれません。それでも放射線治療を選択したのは、仕事への影響を危惧したのでしょう」
どういうことか。
「一般に転移したがんの治療は薬物療法が中心です。薬物治療には少なからず副作用がある上、薬物に淘汰されずに残ったがんはより強力になりやすい。そんな副作用と仕事や生活への影響をてんびんにかけた上での判断とすれば、効果の高い薬物療法より仕事や生活への影響が少ない放射線を選ぶことは十分ありえます。末期がんと折り合って自分らしく生きようとする人にとって、希林さんのような考え方は参考になります」
「自分が死ぬ」準備