「がん家系」に生まれて

どんな道であっても自分の人生…後悔しないよう生きていく

モデル・美肌温泉家の朝香さん
モデル・美肌温泉家の朝香さん(C)日刊ゲンダイ

 交通事故に遭ったのは、がんの腹腔鏡手術を受けてから8カ月後。日曜日の夜、主人の誕生日のお祝いで予約していたレストランに向かう途中でした。

 青信号に変わり、交差点の横断歩道を渡っている時、右折してきた車に左足を踏まれ、右足は車のどこかに当たってはじかれたようになり、倒れました。そのまま救急車で病院へ運ばれ、救急外来の医師が撮ってくれたレントゲンでは、「恐らく骨が折れている」。医師である主人も同意見。ただ、救急医からは「専門医ではないので、平日の診療時間内に改めて整形外科を受診してください」と言われました。

 ちょうどその週、モデルの仕事が入っていたんです。歩けない、ヒールを履けない、なんてあり得ない。だから事故の翌日、整形外科を受診したんですが、その整形外科医の診断は「折れていない」。足を踏まれたまま体をひねった状態で車に押し倒されていますし、足の腱がどうにかなっているようで、太ももから足首まで広範囲の内出血もあるし腫れてもいる。それなのに患部をちゃんと診てくれず、「両足ともに折れていません」。湿布と鎮痛剤だけ受け取って帰りました。

 でもね、足が痛いんです。入っていたモデルの仕事は何とかこなしましたが、痛みが消えず、不安で仕方がない。モデルをする前、損害保険会社に勤めていたこともあり、「痛い時は伝えないと、泣きを見るのは自分」という認識がありました。だから何度も病院に通い、痛みを訴えた。しかし医師は代われど、「折れていない」という診断。後で知るんですが、こういう場合、最初の診断が与える影響が大きい。特に同じ病院では、最初の診断をした医師に遠慮があるのか、別の診断をしづらいのかもしれません。がんの時もそうでしたが、ドラマみたいに親身になってくれる医師は少数派かもしれない、と思うことが多いです。

 3カ月後、アスリートなどが通う整形外科を紹介され、受診。最初の病院で撮ったレントゲンを持っていったら一目で「折れています」。交通事故だからきちんと調べた方がいいと言われ受けたMRIでも、折れていることが分かりました。

 そのまま治療とリハビリに入りましたが、3カ月間放っておいたダメージは大きく、3年半経った今も足は元通りになっていません。ヒールは短い時間なら履けますが、痛くて履き続けられない。運動靴でも坂道を歩き続けると痛い。運動もできず、大腸がんの手術の影響もあって、15キロほど太ってしまいました。思いっきり太っていればそういうキャラで広告の仕事もできるでしょうが、そうではない。頑張っても無理なものは無理だし、今は美肌温泉家の仕事を中心にしています。

 もともと温泉が好きだったこともあり、モデル時代に得た美容の知識を生かして、今後は温泉の良さをもっと伝えていきたい。欧米では温泉の医学効果も認められ、医療行為に使われている。日本でもそうなればいい。がんになり、リンチ症候群だと分かり、交通事故にも遭ったけど、いつ何があっても後悔しない毎日を生きたい。どんな道であっても自分の人生だから。

 (おわり)

▽1974年8月生まれ。44歳。北海道出身。モデルとしてCMなどに多数出演。現在は温泉観光実践士協会理事、温泉ソムリエアンバサダーも務める。

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