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クレアチニン・クリアランスは腎機能低下早期発見の決め手

激しい運動によっても異常な高値を示すことがある
激しい運動によっても異常な高値を示すことがある(C)日刊ゲンダイ

 腎臓や膀胱など泌尿器系のトラブルを知る基本の検査は尿検査ですが、血液検査で腎機能を調べることもできます。クレアチニン検査です。

 基準値は、男性が0.5~1.1㎎/デシリットル、女性が0.4~0.8㎎/デシリットルで、中程度の腎不全だと1.5を超え、2.4以上で重症に。5を超えると腎機能の回復は難しく、10以上では人工透析を余儀なくされます。

 クレアチニンは、筋肉の中でアミノ酸の一種、クレアチンがエネルギーを放出するときに作られる代謝産物で、筋肉量や運動量に比例して数値が上がる傾向。一般に男性の方が女性より高くなりやすく、運動する人の方がしない人より上昇しやすい。つまり、腎機能が悪くなっていなくても、激しい運動によって異常な高値を示すことがあるのです。

 こうしてみると、男性の場合、基準値の上限を0.4ポイント上回ったとき、中程度の腎不全なのか、運動による影響なのか。運動の影響はともかく、中程度の腎不全というとかなり厄介です。クレアチニンの血液検査は、腎機能の異常を早期に知る手掛かりにはなりません。実は、腎機能が50%以下にならないと、上昇しないのです。

 そこで大切なのが、血中のクレアチニンと尿中のクレアチニンを比較するクレアチニン・クリアランスです。腎臓の糸球体は、体に必要なものを取り込んで、不要なものを尿に排出するろ過装置で、この検査は糸球体のろ過機能がどれくらいあるかを調べます。

 基準値は、男性が1分あたり90~120ミリリットルで、数値が下がるほど腎機能が低下していると判断。50~70が軽度、30~50が中等度、30以下は尿毒症が疑われる重症です。採尿と採血の両方を組み合わせるため、初期の異常をチェックできますが、検査方法は簡便な短時間法でも1~2時間。きちんと調べるには、それなりの時間が必要です。

 糸球体の異常を起こす典型的な病気が糸球体腎炎で、そのベースには高血圧が関係しています。腎臓の異常ではなく、うっ血性心不全や心筋梗塞によっても、クレアチニン・クリアランスの数値が低下することがありますが、その背景にも高血圧が関係しています。

 つまり、腎機能の低下と高血圧は不可分の関係。高血圧の治療をしっかり受けることが、腎臓を守る近道です。

 梅田悦生・赤坂山王クリニック院長

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