病み患いのモトを断つ

寝姿勢、運動、持病…「五十肩」と楽につき合う工夫

肩の不調で戦線離脱した中日の松坂投手と女優の石田ゆり子
肩の不調で戦線離脱した中日の松坂投手と女優の石田ゆり子(C)日刊ゲンダイ

 今季開幕ローテ入りが期待されていた中日の松坂大輔(38)が、肩の負傷で戦線離脱した。投手にとって肩は商売道具であり、その状態の良し悪しは生命線だ。昨季6勝と復活しただけにショックは計り知れないだろうが、肩の痛みはアスリートでなくてもつらい。ありふれた五十肩は、眠れないほど痛むこともある。厄介な五十肩と楽に付き合うコツはないか。永寿総合病院整形外科・小川清久非常勤医師(日本肩関節学会名誉会員)に聞いた。

 五十肩は、肩関節を構成する組織に炎症が生じる「肩関節周囲炎」のこと。50代を中心に40代から60代まで中高年に頻発する。「肩が痛くて腕が上がらない」「痛い方の肩を下にして横になれない」「服の脱ぎ着がつらい」「肩の痛みで目が覚める」「痛い方の腕を後ろに回すのがきつい」といった症状が典型。「痛み」と腕の上げにくさの「可動域制限」が症状の主体だ。

「発症から2週間ほどの急性期は、動かしても安静にしても痛みが強い。首から指先に伸びる神経に沿って、上腕や肘の外側、さらに親指と人さし指まで痛むこともあります。患者さんは痛みを和らげようと肩をすくめて生活するため、肩甲骨周辺の筋肉が凝りやすく、首の後ろから背中にかけて鈍い痛みが生じます。『五十肩の痛みが、しばらくして背中に広がった』とおっしゃるのは、そのためです」

 急性期は安静が基本。痛みで眠れないときは局所麻酔と鎮痛剤を注射する。朝晩の冷えで肩が冷えると、痛みが増す。肩の保温サポーターは効果的で、保温が足りないときはその上からカイロを貼るといいという。

「睡眠時の痛み対策は、痛む方の肩から肘の下に枕などを置き、さらにお腹の上でクッションなどを抱えるようにして寝ると効果的です」

 侮れないのが糖尿病だという。

「糖尿病の方は五十肩になりやすい上、長期化しやすい。糖尿病でない人は1年ほどで治りますが、2年たっても治らない人を調べてみると、糖尿病で血糖コントロールが悪かったりします。糖尿病の人は、血糖値の管理が第一です」

■石田ゆり子が苦しんだ石灰性腱板炎は?

 発症から4カ月ほどで痛みが軽くなり、痛くても少しずつ動かせるようになる。そうなれば、可動域制限の元凶である拘縮を解消すべく運動だ。

「ひとつは振り子運動で、イスの背もたれに痛まない手で体を支え、痛い方をだらんと垂らして反時計回りの円を描きます。1回1~2分。もうひとつは、向かい合わせのイスに座り、痛まない方の手で痛む方の手首を握り、体を前に引っ張るイメージで向かいのイスの座面に触れるように伸ばします。10秒キープを5回やるといい」

 これが基本だが、五十肩と同じような症状の病気は多く、見分けることが大切だという。

「高齢者は、肩のインナーマッスルの外側にある腱板が断裂することがあります。断裂した方の腕は痛くて上がりません。ところが、五十肩と違って拘縮がないので、痛くない方の腕で支えながら上げると上がります。もうひとつは、腱板に石灰物が沈着する石灰性腱板炎です。石灰物が腱板にあるうちはそれほどでもありませんが、それが流れると激烈な痛みを生じます。石灰性腱板炎の患者さんは、痛まない手で痛い方の腕を支えながらそろっそろっと歩いて受診されます。歩行の振動だけでも痛むのです」

 腱板断裂は炎症を抑える薬物治療が基本で、手術はケース・バイ・ケース。昨年、女優の石田ゆり子が苦しんだ劇症時の石灰性腱板炎は、注射器で石灰物を吸引した上で局所麻酔剤で炎症を取り除くと、激しい痛みは治まるという。

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