性感染症最前線

性器ヘルペス<1>まず性交渉で感染 再発は性感染症ではない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 性交渉で一度感染すると、ウイルスが消えることなく体内に潜み、再発を繰り返すのが「性器ヘルペス」の特徴だ。

 原因の「単純ヘルペスウイルス(HSV)」は皮膚粘膜の小さな傷から侵入し、潜伏期間は2~10日。性器に小さな水膨れができて、痛みやかゆみ、発熱、脚の付け根のリンパ節の痛みなどの症状が表れる。

 性器ヘルペスはオーラルセックスで、口からパートナーの性器へも感染する。しかし、淋菌やクラミジアのように、のどに病原体がすみ着く(咽頭感染)わけではない。

 HSVは、口のどこに潜んでいるのか。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が言う。

「HSVには1型と2型があります。1型は口唇ヘルペス(口の周りに水膨れができる)の原因になり、感染すると顔面の三叉(さんさ)神経の神経節に潜伏します。2型は骨盤内の神経節に潜伏し、性器ヘルペスを再発させます。しかし、口唇ヘルペスの症状が出ている時にオーラルセックスをすると、1型ウイルスが唾液に多く含まれるので、性器にも感染するのです。実際、性器ヘルペス初感染の原因の約7割は1型によるものです」

 ただし、ウイルスのすみ分けができていて、1型が性器に感染した場合、症状は激しいが再発することは少ないという。性器ヘルペスの再発を繰り返す多くは、2型が性器に感染した場合だ。

■専門医は薬の出し方が違う

 このように、単純ヘルペスウイルスは皮膚に症状が表れるので皮膚病と思われがちだが、本当は神経のウイルス感染症。最初は性交渉でうつるが、再発は性感染症ではない。しかし、再発時には性感染症の感染源になるという厄介な病気だ。

 再発の引き金になるのは、過度なストレスなど免疫力が低下している時。また、初回の感染時にきちんと治療していないと再発を起こしやすくなるという。

「患部にできた水疱は破けてびらんになり、その後、かさぶたになって治ります。いずれにしても、1~2週間で症状が落ち着きますが、きちんと抗ウイルス薬の内服薬で治療しないとウイルスが多いまま潜伏するので、再発しやすくなります。しかし、医療機関を受診しても、4割の医師が抗ウイルス薬の外用薬で治療しているのが現状です」

 ポイントは、神経のウイルス感染症という点。保険診療では、抗ウイルス薬の外用と内服を同時に出せない。専門医であれば、消炎外用薬と抗ウイルス薬の内服を処方するという。

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