薬の成分が胎盤を通過して胎児に影響を及ぼし、臓器の形成不全や神経系の異常を招く危険があるのです。
基本的にワーファリンはずっと飲み続けなければならない薬です。しかし、妊娠・出産期間中は服用できません。ですから、とりわけ胎児の器官が形成される妊娠6~16週の期間は催奇形性のない薬に切り替え、入院して点滴で投与しながら管理出産しなければなりません。
また、抗凝固薬は出血しやすくなるため、分娩時に母体が異常出血を起こすリスクも高くなります。母子ともに特別な環境下での厳密な管理が必要になるのです。
先日、こうしたリスクを考慮したうえで妊娠・出産を希望している36歳の女性の再手術を行いました。彼女は重症の心臓病(僧帽弁閉鎖不全症と心房中隔欠損症の合併)で3歳のときに最初の手術を受け、人工弁置換術で機械弁を入れていました。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」