天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

妊娠を希望する女性患者は弁を交換する再手術が必要だった

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

 薬の成分が胎盤を通過して胎児に影響を及ぼし、臓器の形成不全や神経系の異常を招く危険があるのです。

 基本的にワーファリンはずっと飲み続けなければならない薬です。しかし、妊娠・出産期間中は服用できません。ですから、とりわけ胎児の器官が形成される妊娠6~16週の期間は催奇形性のない薬に切り替え、入院して点滴で投与しながら管理出産しなければなりません。

 また、抗凝固薬は出血しやすくなるため、分娩時に母体が異常出血を起こすリスクも高くなります。母子ともに特別な環境下での厳密な管理が必要になるのです。


 先日、こうしたリスクを考慮したうえで妊娠・出産を希望している36歳の女性の再手術を行いました。彼女は重症の心臓病(僧帽弁閉鎖不全症と心房中隔欠損症の合併)で3歳のときに最初の手術を受け、人工弁置換術で機械弁を入れていました。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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