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ライフデザインドック 患者の性格パターンに合わせ生活指導

「ザリッツ」(右)は椅子に座った状態で立ち上がるだけで測定できる(左上が横山啓太郎教授)
「ザリッツ」(右)は椅子に座った状態で立ち上がるだけで測定できる(左上が横山啓太郎教授)/(提供写真)

 東京慈恵会医科大学付属病院のサテライトクリニックである「慈恵医大晴海トリトンクリニック」(東京都中央区)が、寝たきりのリスクを減らす新型人間ドック「ライフデザインドック」をスタートさせた。

 考案したのは2016年、本院で国内初の生活習慣病に対して行動変容を促す「行動変容外来」を開設した診療副部長の横山啓太郎教授。

 従来の人間ドックと何が違うのか。

「もちろん従来の人間ドックの検査メニューは網羅していますが、大きな特徴は『NEO性格分析』を用いて得られた受診者の性格パターンに合わせたカスタムメードの生活指導を行うこと。それから、タニタが開発した運動機能分析装置(ザリッツ)とマルチ周波数体組成計を使って運動機能や筋肉の状態を『見える化』し、将来の寝たきりになるリスクをチェックできることです」

 NEO性格分析とは、心理学を中心に世界的に認知されている「5因子人格検査(NEO―PI―R)」をアプリ化した性格分析法。人の特性である「神経症傾向(N)」「外向性(E)」「開放性(O)」「調和性(A)」「誠実性(C)」の5つの性格次元から把握する。

 具体的には、受診者はタブレットを渡され、そこに表示される60項目に及ぶ質問に答えていく。例えば「いったんうまくいくと思ったら、あくまでもそのやり方を変えない」という質問に対して、「非常にそうだ」「そうだ」「どちらでもない」「そうでない」「全くそうでない」の中から選ぶといった具合だ。

■行動が変わらなければ健診の意味がない

「NEO性格分析を行うのは、受診者にも自分のことをよく知ってもらいたいからです。運動が苦手な人でも、朝型なのか夜型なのか、大勢の人がいた方がいいのか、それとも1人の方が運動しやすいのか、人によって違います。それに応じて生活指導をしないと長続きしません。受診者と医療者が同じ方向を見て目標を定めるのです」

 行動を良い方向に変える行動変容は、学習理論や行動理論に基づいて確立されてきた技法。例えばダイエットするにしても、保守的・競争型の性格の人はレコーディングダイエット(食物とエネルギー量を記録する)を好む傾向があり、開放型・調和型の性格の人は医療スタッフの傾聴や励ましが有効な傾向があるという。

 もうひとつの特徴である運動機能分析装置は、椅子に座った状態で本体に足を乗せ、踏ん張って立ち上がるだけで計測できる。脚の筋力とバランスの状態を計測し、「パワー(5段階)」「スピード(5段階)」「バランス(3段階)」の3項目で評価する。マルチ周波数体組成計では、「体重」「BMI(肥満指数)」「筋肉量」「筋質点数」「体脂肪率」「筋肉総合評価」が測定できる。

 NEO性格分析と、これらの測定を組み合わせることで、要介護の原因となるサルコペニアやロコモティブシンドロームの予防を目指すという。

「従来の人間ドックは70歳程度の寿命を想定して、現役世代に心筋梗塞や脳卒中などの急性疾患が起こらないことをターゲットにしてきました。しかし、寿命が急速に延び70代、80代の人が働く社会にシフトしてくると、80歳を過ぎても元気にゴルフ、旅行、仕事などを楽しみ、面白く生きるために、寝たきりや認知症などの加齢に伴う慢性疾患の対応が課題となります。それを減らすには40代からの生活習慣病の管理が非常に重要になるのです」

 ライフデザインドックは、当初は一部の企業職員を対象にテスト運用し、その後、順次一般受け付けをしていく予定という。

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