性感染症最前線

性器ヘルペス<2>女性の罹患率は男性の2倍で重症化しやすい

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 性器に小さな水膨れができて、痛みやかゆみ、発熱、脚の付け根のリンパ節の腫れと痛みなどの症状が表れる「性器ヘルペス」。病原体の「単純ヘルペス(HSV)2型」に1度感染すると、症状が治まった後もウイルスは骨盤内の神経節に潜み、免疫力が低下すると再発を繰り返す。

 HSVは皮膚粘膜の小さな傷から侵入して感染する。罹患(りかん)率を男女で比較すると、男性よりも女性の方が2倍以上高い。どうしてなのか。性感染症専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長が説明する。

「それは男性の性器に比べて、女性の性器は粘膜部分が広範囲だからです。感染部位は外陰部だけでなく、子宮腟管や腟壁にまで及ぶことも少なくありません。だから、男性よりも感染しやすく重症化しやすい。また、女性は免疫力を低下させる黄体ホルモンの影響で、妊婦や排卵後は感染しやすくなります」

 男女でどちらが感染しやすいかを調査した米国の研究もある。男女どちらかが性器ヘルペスにかかっているカップル144組を対象に観察。

 結果、男性から女性に感染する確率(16.9%)は、女性から男性に感染する確率(3.8%)の4倍以上高いことが示されたという。

 HSVの初感染時はウイルスに対する免疫がないため、症状が激しく出る。特に女性の初感染は、男性に比して深刻だ。

「女性では、性器の左右対称に水膨れが破れた多数のびらんができるので、排尿すると痛い『膀胱(ぼうこう)炎様症状』が出る。そのため『歩行障害』も起こります。また『排尿障害』『便秘』などの末梢神経まひを伴うこともある。時に『強い頭痛』『項部硬直』などの髄膜刺激症状を伴う場合もあります。男性に神経症状が出ることは女性に比べて非常に少ないです」

 また、初感染例ではHSVが仙骨神経根に直接進展して、限局性の髄膜脊髄炎を起こす場合がある。そして、尿意を感じない神経因性膀胱の状態になると「エルスバーグ症候群」と呼ばれる。こうなると尿が出なくなるので、膀胱にカテーテル(細い管)を留置して、2~3日の入院が必要になるという。

「女性の性器外のヘルペスには、乳頭から乳輪にかけてびらんが多発し、痛みを伴う症例もあります。これは口唇ヘルペス(口の周りに水膨れができる)にかかった男性が乳首をなめることによりHSV1型に感染し、発症します。ただ、乳首に再発することはまれです」

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