失明リスクの高い目の病気

糖尿病網膜症 糖尿の進行と視力の状態は必ずしも一致しない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「平成28年国民健康・栄養調査」によると、糖尿病を「強く疑われる」「その可能性が否定しきれない」人の数は、ともに1000万人です。糖尿病網膜症は、その合併症のひとつです。糖尿病発症から10年以上で発症し、視力低下や視野欠損・失明などの視覚障害があらわれます。20~60代の中途失明原因の上位に常に位置し、年間3000人が新たな視覚障害者として認定され社会福祉の対象になっています。

 糖尿病網膜症は一度発症すると元に戻せません。いかなる名医、薬、サプリメントも進行を緩やかにするだけです。だからこそ、早期発見、早期治療が重要です。糖尿病と診断されたらすぐに眼科の定期診断を始めましょう。

 この病気は3段階で進行します。まずは「単純網膜症」です。網膜の血流が低下して、毛細血管の壁がもろくなり、小さな血管の瘤ができたり、「硬性白斑」と呼ばれるタンパク質や脂質の白い染みができたりします。

 次が「増殖前網膜症」。その次に起こる「増殖網膜症」の前段階で、網膜の細かい血管が詰まって網膜が白く変色したように見えます。また、毛細血管などから染みだした水分が、網膜の組織にたまって浮腫が見られます。 

「増殖網膜症」になると、新生血管と、増殖組織と呼ばれる白い線維性の膜が網膜の上に出現します。眼球内の硝子体にも広がり、手が付けられなくなります。

 この段階でも黄斑部に影響がなければまだ目は見えます。この病気が恐ろしいのは「糖尿病の進行と視力の状態は必ずしも一致しない」ことです。

 検査ではまず、瞳孔を開いて眼底出血の有無を見ます。糖尿病網膜症が疑われれば、蛍光眼底撮影を行います。網膜に血流が途絶した無灌流領域が生じていれば、汎網膜光凝固治療を行います。

 眼科検診で糖尿病が見つかったときは、内科から紹介されたときよりも眼科の予後が悪いことを覚えておきましょう。

 糖尿病網膜症が高度に進行すると「茶目」と呼ばれる虹彩にも新生血管が生じて、コントロールが困難な緑内障を誘発することもあります。

 (つづく)

清澤源弘

清澤源弘

1953年、長野県生まれ。東北大学医学部卒、同大学院修了。86年、仏原子力庁、翌年に米ペンシルベニア大学並びにウイリス眼科病院に留学。92年、東京医科歯科大眼科助教授。2005-2021年清澤眼科院長。2021年11月自由が丘清澤眼科を新たに開院。日本眼科学会専門医、日本眼科医会学術部委員、日本神経眼科学会名誉会員など。

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