Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

ヤフーの厚労大臣賞受賞で注目 がんの治療と仕事の両立

受賞企業の担当者と(左が筆者)/(C)日刊ゲンダイ

 たとえば、厚生労働大臣賞を受賞したのはヤフーです。全8034人の社員を対象に「がん検診と早期治療の重要性」についてeラーニングを実施。社員の受診を促し、定期健康診断にがん検診の項目を組み込んでいて、勤務時間内に受診できるように仕事を調整しているそうです。

 社内には「健康相談窓口」があって、産業医・看護師に病気のことを相談できます。そうやって病院の主治医と産業医などが連携しながら、社員の部署に働きかけて治療と仕事の両立をサポートしているのは、素晴らしい取り組みです。担当者はスピーチで「弊社の取り組みをどんどん社外に発信してがん対策を啓発していきたい」と語っていました。

 大企業でなくても、がん対策は可能です。検診部門で表彰されたのは新潟の研冷工業で、社員数は30人。社長自らがん対策に積極的です。新聞などでがん対策の情報を知ると、朝礼で社員に伝えるだけでなく、社員共有のネット掲示板で掲示するとか。その取り組みが実を結んで、胃がん、大腸がん、肺がんの検診受診率は100%を達成しました。がん検診の受診率は5割ほどですから、画期的です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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