病み患いのモトを断つ

花粉症の薬には血糖値上昇リスクが 注意するべきことは?

市販薬を追加するなら漢方を
市販薬を追加するなら漢方を(C)日刊ゲンダイ

 マスク姿が目立つ。春の訪れとともに、スギ花粉が悪さをしている。ウェザーニューズによると、スギ花粉の飛散量は前年に比べて、東京が4.3倍、愛知が5.5倍、大阪が6.7倍。花粉症の人にとっては絶望的な数字が並び、鳥取は何と9.3倍! 病院や薬局などは“花粉特需”に沸いているが、その薬は糖尿病を悪化させるリスクがあるという。聖路加国際病院内科名誉医長で、「西崎クリニック」院長の西崎統氏に聞いた。

「花粉症の症状が強いときには、ステロイド剤を含む薬剤が処方されることが珍しくありません。ステロイド剤には、糖尿病を悪化させる副作用があり、糖尿病の人が知らずに服用すると、血糖値が急上昇する恐れがあるのです」

 そのひとつがセレスタミンだ。抗アレルギー薬とステロイド剤の合剤で、炎症を抑える働きに優れている。

 くしゃみや鼻水で一日に何度も鼻をかんだり、鼻づまりがひどくてほとんど口呼吸だったりすると、処方される。そんな重症者にとっては“頼みの綱”だが、こと血糖値に関しては注意が必要だという。

「ステロイドは、経口薬や注射剤がよくありません。点鼻や点眼のステロイドは局所的な作用で、経口や注射のような副作用のリスクは少ないとされますが、花粉症のシーズンは長い。長期にわたって何度も使用する重症の人は、注意するのが無難です」

■市販薬を追加するなら漢方を

 花粉症の治療の基本となる抗アレルギー薬は、一般に糖尿病との関係で安全とされるが、必ずしもそうではない。

 プソイドエフェドリンとメチルエフェドリンは鼻づまりを楽にする成分で、花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎の薬に含まれる。処方薬のほか、市販薬でも使われるほどだ。それが交感神経を刺激して、血糖値を下げるインスリンの効き目が悪くなることから、血糖値が上昇するという。

「エフェドリンは自律神経に働きかける薬で、そういう作用の薬は鼻炎薬や咳止めに多い。花粉症に加えて風邪をひいたりすると、それらの作用が重なりやすいので、強い副作用が表れることがあります。血糖値の上昇だけでなく、薬の使用後に動悸がするケースも少なくありません」

 抗アレルギー薬で思うようによくならず、市販の点鼻薬や点眼薬を追加してしのいでいるうちにそんな症状に襲われ、ビックリして受診したという患者は珍しくないという。

 では、糖尿病の人はどうやってこのシーズンを乗り切ればいいか。

「耳鼻科では、糖尿病であることを必ず伝えて診察してもらうこと。そうすれば血糖値を悪化させる薬は処方されませんから」

 そうやって処方薬をもらいながら、くしゃみや鼻水がつらくて、薬局に飛び込むことはあるだろう。

「追加して市販薬を使う場合は、たとえば鼻の症状なら小青竜湯という漢方薬を選ぶといい。これはステロイド剤を含まず眠くなることもありません」

 花粉が大量に飛散する今年は、60代や70代で新たに花粉症デビューする人も多いという。

 生活習慣病が持病の世代はもちろん、そうでない人も用心だ。

関連記事