人生100年時代の健康法

全身の対策を 体を老化させる「酸化」「活性酸素」の仕組み

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「腕を錆びつかせない」なんて洒落たセリフがあります。化学的には「錆び」は金属が空気中の酸素によって「酸化」されること、あるいはその結果生じた酸化物のこと。ここだけの話、私は大学で化学を専攻していました。いまではすっかり錆びついていますが、今回は少しばかり磨き直したので、ご安心ください。

 酸化が老化の原因であることは、いまでは誰でも知っています。もちろん、体は有機物でできているので、その酸化の仕組みも生成物も、金属とは全く違っています。しかし、直観的に分かりやすいため、「からだの錆」という表現が使われているのです。

 体の酸化は分子レベルや細胞レベルで生じます。原因となるのが「活性酸素」です。細かく見れば何種類にも分類されるのですが、要は空気中の酸素よりも反応性の高い状態になった酸素のことです。主に細胞内のミトコンドリアで発生します。

 ミトコンドリアは「細胞の発電機」「エネルギー生成工場」などと呼ばれる微小器官です。細胞1個当たりに数千個が、すべての細胞それぞれに入っています。その仕組みは燃料電池とやや似ています。燃料電池が水素と酸素を化学反応させて電力をつくり出すのに対し、ミトコンドリアは細胞内に取り込まれたブドウ糖と酸素を反応させて、化学エネルギーに変換します。生命活動に必要なエネルギーの大半は、こうしてつくられているのです。

 ところがその過程で、ミトコンドリア内に大量の活性酸素が生じてしまうのです。反応性が強いため、活性酸素はそのままでいることができず、近くのさまざまな分子とすぐに結合(酸化)してしまいます。タンパク質、糖、脂質などとも反応しますし、DNAとも反応します。すると酸化された分子が劣化して、本来の働きを失ってしまうのです。つまり、錆びついてしまうわけです。そんな細胞内の錆が積もり積もって、やがて臓器を弱らせたり、顔のしわなど目に見える老化につながっていくのです。

 酸化は体全体で常に起こっています。そのため、腕だけを錆びつかせないようにするのは、かなり難しい話。やるなら、全身の抗酸化対策をしなければなりません。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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