後悔しない認知症

記憶障害は2種類 進行を遅らせるには「口に出す」機会を

写真はイメージ(C)PIXTA

 一方の想起障害は過去に覚えたことを思い出せなくなる障害である。しかし、こちらは認知症と診断された人特有の障害というわけではない。

「アレ、なんだっけ、ほらアレだよ、アレ」に代表されるように、中高年以上になると誰でも経験することだ。年を重ねると、記憶の書き込み、記憶の上書きが増えるために過去に脳に入力したことを想起できなくなってしまう現象だ。高齢の親に限らず、子ども世代でも、久しぶりに会った人の顔は覚えていても、名前が思い出せなくて困ったことがあるはずだ。人の名前に限らず、地名、書名、曲名、社名などの固有名詞を想起できなくなる。

 記銘力障害、想起障害のいずれも、老化による脳の機能低下によって生じるもので、これを改善することは難しい。しかし、進行を遅らせることは可能だ。記銘力については、新しい情報をメモする、ノートに書き込むといった習慣をつけること。想起力については、1日前、数時間前の出来事を意識的に思い出すよう心掛けること。また、コミュニケーションの機会を減らさないことも大切だ。会話の中で新しい情報を入力する、あるいは「入力した情報を口にする=出力する」といった機会をできるだけ多く持つことだ。そうしたことが海馬の萎縮を遅らせる。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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