がんと向き合い生きていく

緩和病棟に入院する患者は「経緯」も「思い」もそれぞれ違う

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「仏教用語にも『以心伝心』という言葉があります。それで、お互いに相手の心の動きをキャッチしている。ですから患者の方も、言葉では表現しなくとも……目でそれとなく告げていることがある。看取るほうの『あなたは、もう駄目かもしれない』という思いも、相手に通じる。何も言わなくとも、実質的に告知し告知されているような関係が最期を迎えるという場面で出来上がっている。……日本人には馴染みやすいのではないでしょうか。私自身は、そのほうがありがたい。そこまで考えてくれる医師が、たくさん出てきてほしいと思っているんです」

 私は山折さんに賛成です。

 ある緩和病棟の看護師から聞いた話です。胃がん・がん性腹膜炎だった88歳の女性が、意識がもうろうとした状態で緩和病棟に入院された時、血圧は下がり、ご臨終が近い状態と判断されました。

 緩和病棟の担当医は、患者の耳元で「あなたは死ぬんですよ! 私も後から行きますからね」と大声で言ったそうです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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