「仏教用語にも『以心伝心』という言葉があります。それで、お互いに相手の心の動きをキャッチしている。ですから患者の方も、言葉では表現しなくとも……目でそれとなく告げていることがある。看取るほうの『あなたは、もう駄目かもしれない』という思いも、相手に通じる。何も言わなくとも、実質的に告知し告知されているような関係が最期を迎えるという場面で出来上がっている。……日本人には馴染みやすいのではないでしょうか。私自身は、そのほうがありがたい。そこまで考えてくれる医師が、たくさん出てきてほしいと思っているんです」
私は山折さんに賛成です。
ある緩和病棟の看護師から聞いた話です。胃がん・がん性腹膜炎だった88歳の女性が、意識がもうろうとした状態で緩和病棟に入院された時、血圧は下がり、ご臨終が近い状態と判断されました。
緩和病棟の担当医は、患者の耳元で「あなたは死ぬんですよ! 私も後から行きますからね」と大声で言ったそうです。
がんと向き合い生きていく