長引く腰痛の陰に…難病指定「強直性脊椎炎」の可能性が

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 国民病の腰痛に意外な重大病が隠れていることがある。昨年12月に新たな治療薬が承認された強直性脊椎炎も腰痛を主症状とする病気で、原因が解明されておらず、早期診断が難しい。東邦大学医療センター大橋病院膠原病リウマチ科の亀田秀人教授に話を聞いた。

 3カ月以上続く腰痛がある。安静にしていると痛みが増し、動くと痛みが楽になる――。こういった症状が40歳になる前からある場合、レントゲン(エックス線)検査が異常なしでも、この先、強直性脊椎炎を発症するかもしれない。強直性脊椎炎は厚労省の難病指定になっており、進行すると脊椎の硬直が起こる。

「首から腰までの背骨や胸・骨盤の関節などに炎症症状が見られる病気を総称して脊椎関節炎といいます。脊椎関節炎は、体を支える役割である体軸関節の炎症が主体の体軸性脊椎関節炎と、末梢関節の炎症が主体の末梢性脊椎関節炎があり、強直性脊椎炎は前者の代表的な病気になります」(亀田教授=以下同)

 男性920例、女性476例を対象にした海外の調査では、強直性脊椎炎は、症状が表れてから診断がつくまで平均9年。日本でも平均6・7年という報告がある。

 大病院を複数回っても診断がつかなかったという患者は珍しくなく、「精神的な病気」と言われた経験を持つ患者もいる。

 確定診断まで時間がかかるのは、強直性脊椎炎の診断基準に「レントゲン検査の所見」が入っているからだ。

「しかし、強直性脊椎炎は早期ではレントゲン検査に異常が表れません。進行スピードは非常にゆっくりです。レントゲン検査で仙腸関節炎が見られたら強直性脊椎炎の確定診断につながりますが、そこに至るまで、腰痛などの症状が出始めてからかなりの年数が必要なのです」

 強直性脊椎炎は、白血球にある抗原「HLA―B27」と関連があることが分かっている。血液検査をすると、強直性脊椎炎の患者の80%以上がHLA―B27が陽性だという。ところが、このHLA―B27の保有率は地域や人種で差があり、日本人は1%未満しか持っていない。

「しかも、HLA―B27陽性者のうち強直性脊椎炎の患者は5%程度しかいません」

 強直性脊椎炎の早期段階である「エックス線基準を満たさない」体軸性脊椎関節炎の診断基準では、仙腸関節のMRI検査の陽性所見、あるいは血液検査の結果がHLA―B27陽性となれば、腰痛(炎症性背部痛)や関節炎などを見て、確定診断に至る。

 ところが日本人はHLA―B27の陽性率が極めて低く、かつ、HLA―B27陽性のうち強直性脊椎炎の患者が占める割合も極めて低いため、血液検査から早期診断に至るケースはまれだ。

■新薬登場で症状のコントロールが可能に 

この段階では、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の投与や運動療法などの治療がまず行われる。

 経過観察で、強直性脊椎炎に移行するかどうかをチェックするのも重要。強直性脊椎炎では、TNF阻害薬や昨年12月承認のIL(インターロイキン)―17阻害生物学的製剤なども用いる。

「強直性脊椎炎ではIL―17に誘導される炎症が中心的役割を果たしているため、IL―17を阻害する今回の薬は有用性が高いと考えられます」

 強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎は治る病気ではないが、治療で症状をコントロールすることは可能だ。まずは、適切な診断を。

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