天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

ゲノム医療の進歩により患者がふるい分けられる危惧がある

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長

 そうなると、今後は病気になる前の段階で遺伝子検査を受け、がんリスクが高い場合は対象となる臓器を摘出するといった対処法を考える時代になってくるかもしれません。乳がんリスクが高いことがわかって乳房を切除したハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんのようなケースが広まることが考えられます。

■医療の公平性を保つための議論は欠かせない

 また、がんゲノム医療によって抗がん剤が効く人と効かない人がはっきり判定できるようになると、「医療の公平性」が保たれなくなってしまうのではないかという危惧も出てきます。

 いまは日本人の2人に1人は一生涯のうちに何らかのがんにかかる時代です。がんは避けられない病気であるからこそ、公平性が大切になってきます。がんをリーズナブルな治療法で制圧できれば問題ありません。しかし、超高額な特殊な治療でなければ病気を管理できないとなると、たとえばリーズナブルな一般的治療よりも個人の負担を重くするなど、新たな対策を考えていくべきという意見もあります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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