いま、私は東京医科大学病院で、聴神経腫瘍の手術を年間約100件手掛けています。患者さんの3分の2はほかの病院からの紹介で、残りの3分の1はインターネットで調べていらっしゃった方です。
聴神経腫瘍について、どんな病気か想像がつきにくい方が多いのではないでしょうか?
聴神経腫瘍は、良性脳腫瘍のひとつ。平衡感覚を担う前庭神経から発生します。“良性”と言いますが、聴神経腫瘍が大きくなると脳幹を圧迫し、命に関わります。また、そこまでいかなくても、聴覚をつかさどる蝸牛(かぎゅう)神経の圧迫が増すと、聴覚を失います。手術で腫瘍を取り除いても、すでに失われてしまった聴覚は元に戻りません。
さらには、脳には運動や感覚をつかさどるさまざまな神経が集まっています。聴神経腫瘍ができる場所柄、手術での腫瘍摘出は非常に難しい。もし、治療の最中にほかの神経を傷つけてしまえば、顔面神経まひを起こすリスクがあるからです。
耳鳴りめまい難聴…聴神経腫瘍かも