病み患いのモトを断つ

胃がん12万円、肺がん45万円…医療費は保険より貯蓄100万円

退院を目指してリハビリ中(堀ちえみ)/
退院を目指してリハビリ中(堀ちえみ)/(C)日刊ゲンダイ

「またテレビに出られるくらい努力して、しゃべれるようになる」

 口腔がんの手術で舌を60%切除したタレントの堀ちえみ(52)は今月中の退院を目指し、発声や食事のリハビリに励んでいるという。先月19日に入院、22日に手術を受けてから3週間。

 一般に術後は順調なら1カ月ほどで退院とされるから、間もなく退院できそうだ。個室に1カ月の入院となると、ベッド代だけで100万円近いはず。もちろん、治療費や薬代、食費などもかかる。芸能人ならワケない金額かもしれないが、一般人にはつらい。重大病で入院を伴う医療費はどの程度用意すればいいか――。

 厚労省の「患者調査」(2017年)によると、がん全体の平均在院日数は16日。種類別に見ると胃がんは19日、大腸がんと肺がんは16日、肝臓がんは17日、乳がんは12日。胃がんや大腸がんなどで早期なら2、3日の入院で済むケースもあるが、最低でも半月程度の入院は覚悟しなければいけない。ほかの病気の入院日数はどうかというと、死因2位の心筋梗塞は20日で、同3位の肺炎は27日、4位の脳卒中は2カ月超の78日だ。

 がんをはじめ重大病になると、1カ月前後は病院のベッドで過ごすことになる。堀ちえみのような1カ月の入院は、決して珍しいことではないのだ。命には替え難いことだが、そうなると医療費が気になるだろう。

 たとえば、早期の胃がんで内視鏡で切除できたとすると、医療費の総額は40万円ほど。3割負担で12万円程度だ。早期肺がんでも、術後に再発予防で抗がん剤をプラスすると、総額は150万円近くにハネ上がり、3割負担で45万円に上る。

 長期のリハビリが不可欠の脳梗塞だと300万円を超え、3割負担で100万円近い。治療で脳の血栓を溶かす代わりに、銀行残高から帯封が消える。

■実際の負担額はかなり軽い

 SMBCコンシューマーファイナンスの「30代・40代の金銭感覚についての意識調査」(2019年)によると、貯蓄ゼロの割合は23%。生活にカネがかかって貯蓄が難しい世代とはいえ、100万円以下が6割だ。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(2人以上世帯)によれば、70歳以上の世帯も3割は貯蓄ゼロだ。

 貯蓄が乏しい人にとっては、民間の医療保険が重要に思うだろうが、必ずしもそうではないという。経済ジャーナリストの荻原博子氏が言う。

「公的保険制度には、医療の負担を抑える高額療養費制度があります。一般的な収入の方なら、がんの治療に100万円がかかったとしても、高額療養費制度で自己負担額9万円ほどに抑えられるのです。1年に高額療養費の適用を3カ月受けると、4カ月目からはさらに負担が減って、4万4400円が上限。だから、患者調査の医療費はその通りですが、実際の負担額はかなり軽い。保険会社はその高額療養費の説明をせずに保険の必要性をアピールしますが、実際はそれほど必要性はありません。貯蓄がなくて保険会社に保険料を納めるなら、その分を貯蓄に回す方が賢明。老後を見据えて医療費としての必要な貯蓄額は、1人100万円が目安です」

 70歳未満の場合、高額療養費は年収で5つに区分される。月収28万~50万円だと、「8万100円+(総医療費―26万7000円)×1%」で計算できる。1カ月に2万円ずつ貯めれば、100万円は4年ほどでクリアする。万が一のためにこれくらい貯めておけば安心だ。

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