一滴からのがん検診

「消化器がんマイクロアレイ血液検査」で膵臓がんも早期発見

マイクロアレイ血液検査
マイクロアレイ血液検査(提供写真)

 わずか5㏄の採血で、がんの有無を判別する。その感度はおよそ98・5%。体の外で行う検査なので、CTやバリウム検査のような副作用もない。それが、株式会社「キュービクス」が開発し、現在全国1100カ所以上の医療機関で採用されている「消化器がんマイクロアレイ血液検査」だ。

「この検査を開発するキッカケになったのは金沢大学消化器内科の金子周一教授の研究です。肝臓がん患者を対象に、血液とがんのせめぎ合いが、がんの局所だけでなく、末梢血でも起こっていることを突き止めたからです。私は、もともと製薬会社の社員でしたが、金子教授から、この検査の事業化を依頼され、2004年に株式会社キュービクスを設立しました」

 キュービクスの丹野博代表取締役社長がこう話す。マイクロアレイとは、人間の遺伝子4万4000個を貼り付けたチップのこと。このチップに血液から採取したRNAを垂らすと、がんに関連する遺伝子が特殊な光を発する。それを特殊なスキャナーで読み取ることで、がんの有無を判別する。

 マイクロアレイは1枚約12万円で、現在1枚で4人分の検査が可能だ。実際に医療機関で、人間ドックのオプションのひとつなどとして検査をする場合の費用は、医療機関によって異なるが、保険適用外で10万円前後ぐらいからだという。

「現在、検査試験対象は胃・大腸・膵臓・胆道といった消化器のがんで、これらのがんに関しては、高い感度と特異度(がんでない人をがんではないと判別できる確率)を示しています。特に早期発見が難しいとされている膵臓がんも、ステージ2から反応することを臨床研究で確認しています。早期膵臓がんであるステージ2から治療を始めると、ステージ3から始めた場合よりはるかに生存率が高くなります」

 また、大腸がんについても、「親や祖父母が大腸がんであったり、過去にポリープが見つかったりしている人は特にこの検査を受けることをおすすめしたい」と言う。

 もっとも、消化器がんマイクロアレイ血液検査は、がんの診断をするものではないので、この検査で陽性になった場合は、改めて正式な診断をつけるための精密検査を受ける必要がある。

「PETや内視鏡検査と一緒にこの検査を受ける人も多いですが、価格を除けば手軽に受けられるのがマイクロアレイ血液検査の特長で、これ一本だけを受ける方もいらっしゃいます。1年に1回など定期的に受けて、5、6回目のリピーターとなっている方もかなりいらっしゃいますね」

 すでに検査実績は、年間4000例程度にも及んでいるという。

(フリージャーナリスト・里中高志)

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