睡眠専門医が指摘 今年の新入社員は「五月病」がより深刻

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今日は「睡眠の日」だが、4月から新入社員を迎える人は、上司や先輩として、彼らの「睡眠管理」にも注意を払った方がいい。睡眠不足や質の悪さは、仕事のパフォーマンスに大きく影響するのだ。

 睡眠不足が仕事のパフォーマンスへ与える悪影響ぶりはかなりのものだ。17時間起きっぱなしの人は、日本酒を1~2合飲んだのと同じ程度のパフォーマンス低下。この状態で運転すると、酒気帯び運転で25点、免許取り消し2年になるレベルだ。

「睡眠不足が続くと、知らず知らずのうちに脳や体への悪影響が蓄積してしまう恐れがある」

 こう言うのは、久留米大学医学部神経精神医学講座・内村直尚教授。人間は朝が来たら目覚め、日中は体と心が活動的になり、夜になったら眠くなるという無意識で働く体内リズムに従って行動しているが、不適切な睡眠は体内リズムを乱し、さまざまな不調を招く。

 これに最も当てはまりやすいのが、新入社員なのだ。

「大学生の生活パターンは昼夜逆転。4月になって生活リズムを変えようとすると、完全な時差ボケ状態になり、仕事に集中できません」(内村教授)

 一般社会人、大学生A、大学生Bに分けて説明すると、一般社会人が0時に就寝し、7時に起床するとする。大学生Aは就寝が3時、起床が11時。一方、大学生Bは就寝が6時、起床が14時。それぞれの中央値は、一般社会人が3時30分、大学生Aが7時、大学生Bが10時。一般社会人の生活と比較すると、大学生Aは3時間半後ろにずれ、大学生Bは6時間半後ろにずれる。つまり、大学生Aはインド帰りと同様の時差ボケであり、大学生Bに至ってはギリシャ帰りと同様の時差ボケになるのだ。

 さらに、休日の寝だめが拍車をかける。

「健康な人の金曜の夜と、金曜の夜と土曜の夜に寝ていられるだけ寝て“休日朝寝坊”をした場合の日曜の夜のメラトニン(睡眠を促すホルモン)分泌の推移を調べると、金曜の夜に比べて日曜の夜はメラトニンが出るのが遅くなり、また分泌量も少なく寝つきが悪かったのです」(内村教授)

 体内リズムは本来25時間だが、太陽の光によって1日24時間に合わせてリセットされる。“休日朝寝坊”をすると、それだけ太陽の光を浴びる時間が遅れるので、体内リズムが遅れる。

 結果、月曜日以降のパフォーマンスに悪影響を与えるのだ。休日朝寝坊をした場合と、いつも通り寝た場合の平日の眠気度と疲労度の比較をした研究では、どちらも休日朝寝坊の翌日の方が強く、中でも月曜日や火曜日の週初めが強かった。

■就寝前の数時間はスマホを見ない

 新入社員の睡眠について、今年は特に必要だと、内村教授は警鐘を鳴らす。10日間の大型連休を控えているからだ。

「4月からやっと生活のリズムが整ってきたところでGWに入り、大学生活の乱れがまた戻る。睡眠不足や不眠による体内リズムの乱れは、仕事のパフォーマンスだけでなく、うつ病、肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心血管イベントなどさまざまな障害のリスクを高めます。今年は例年より五月病が増える可能性があります」(内村教授)

 対策は“規則正しい生活”以外にない。朝は決まった時間に起き、太陽を全身に浴びる。シャワーや運動もいい。食事時間を規則正しくし、眠りにつく数時間前からパソコンやスマホを見ない。当然ながら、夜更かししない。万が一寝る時間が遅くなった時も、起床時間はいつもと同じに。

 問題は新入社員にこれをどう実践させるか、か。

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