ニューヨークからお届けします。

ロボットが余命宣告する時代 医師と患者の関係良好の期待も

「テレプレゼンス・ロボット」で告知!?
「テレプレゼンス・ロボット」で告知!?(C)ロイター

 AIやロボットが私たちの生活を豊かにする一方で、多くの職を奪うという論争は日々絶えることがありません。医療現場では、「ロボットから余命宣告された」との訴えがニュースになり波紋を呼んでいます。

 カリフォルニア州のカイザー・パーマネンテ・メディカルセンターの病室で医師を待っていた78歳の患者、アーネスト・クインタナさんの元を訪れたのは、主治医ではなく「テレプレゼンス・ロボット」。

 ロボットの頭部分がスクリーンになり、そこに別の場所にいてリモートでつながっている主治医の顔が写っているものです。

 そこで告げられたのは、クインタナさんの慢性閉塞性肺疾患の病状には手の施しようがないという冷酷な現実でした。

 クインタナさんは当時孫娘と一緒にいて、耳が遠いクインタナさんのために彼女がその事実を伝えなければならず、その状況が事態をますます悪くしました。ショックを受けた孫娘はその様子を撮影し、ネットに投稿したことから炎上。そしてクインタナさんは翌日亡くなりました。

 患者の生死に関わる繊細であるべきコミュニケーションが、このような形で行われたことは残念としか言いようがありません。しかし、同様のことは今後も起こりうると警告する声も少なくありません。深刻な医師不足で、特に貧困地域の病院ではビデオスクリーンによる診察が必要不可欠になっていくと考えられているからです。

 一方で、AIが医師と患者の関係を向上させられるといった期待もあります。たとえば診察の時、記録を取るために患者の顔よりもパソコン画面を見続ける医師も、会話を正確に録音するAIがあれば、患者との時間をもっと充実させることができるかもしれません。

 しかしそれも、医師をはじめ医療関係者がどう患者と向き合い、テクノロジーを使うかにかかっている。こんな月並みな結論に戻ってしまうのですが……。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

関連記事