性感染症最前線

尖圭コンジローマ<1>感染源は元カレ?潜伏期間は最大8カ月

治療3カ月後の再発率は30%
治療3カ月後の再発率は30%

 夏のある日、20代前半の女性A子さんが、性感染症治療専門施設「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)を受診した。訴えはこうだ。

「先生、アソコにイボイボができました。痛くもかゆくもありませんが、気持ちが悪くて……」

 さっそく診察すると、A子さんの性器(小陰唇と腟前庭)に、大きさが径1~5ミリの小さなとがったイボがたくさんできていた。

 医師は「この病気は『尖圭(せんけい)コンジローマ』です。今、パートナーはいますか」と聞く。するとA子さんは「え、尖圭コンジローマ。本当ですか。今の彼と付き合い始めて2カ月になります。じゃあ、彼にうつされたんですね。ひどいわ、頭にきちゃう」と急に怒りだした。

「今の彼」という言葉が気になった医師は、さらに「付き合って2カ月ですか。では、元カレとはいつ別れましたか」と質問した。

 A子さんは「別れたのは、もう半年も前ですから関係ないですよね。うつしたのは今の彼に決まっています」という。

 ところが、元カレにも関係があるのだ。同院の尾上泰彦院長が言う。

「尖圭コンジローマは、病原体に感染してから発病までの潜伏期間が約3週間~8カ月(平均3カ月)と長いのです。そのため、前のパートナーの状態も把握する必要があります。A子さんの場合、もし元カレに尖圭コンジローマが認められれば、それが感染源として最も疑わしいことになります。潜伏期間が長いため、このような誤解を招くケースがあるのです」

 そこで確認のため、A子さんに元カレに電話してもらった。やはり元カレはA子さんと別れてから、尖圭コンジローマの治療を泌尿器科で受けていたことが判明。感染源は元カレだったのだ。

 また念のため、A子さんの現在の彼氏にも来院してもらい診察をした。幸いなことに、その時点で発症はしていなかった。しかし、尖圭コンジローマは治療後3カ月以内に約30%が再発するといわれる。治療後3カ月経過して再発がなければ、とりあえず治癒となるが、その後も再発する場合があるので約6カ月は経過観察をすることが重要になるという。

「尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)が皮膚や粘膜の微小な傷から感染して生じるイボです。外用薬や外科切除などの治療でイボを取っても、HPVは表皮の最も深い基底細胞に存在し、免疫力が低下すると再発しやすくなる。絶対的治療法はないので、治療は再発との闘いでもあるのです」

 次回は、HPVの種類やワクチンを取り上げる。

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