「自分が死ぬ」準備

79歳の人気医師が断言「週2回のステーキが元気の源です」

50歳以上は肉食を
50歳以上は肉食を(C)日刊ゲンダイ

 ロックのカリスマ・内田裕也さんは、ハンバーグとステーキ、寿司、オムライスが好物だったという。肺炎で入院していた都内の病院では、娘の也哉子さん(43)がこれらを用意。息を引き取る前の日の16日には、オムライスを3分の1ほど平らげたそうだ。享年79。ロッカーの意地か、最期まで娘と寄り添えたことの喜びか。いずれにしても、生きることへの執念が垣間見える。とかく粗食が美徳とされるが、最期まで元気に生きるなら、粗食はよくない。シニアほど、積極的に肉を食べるべきなのだ――。

 ◇  ◇  ◇

 細菌博士として知られる東京医科歯科大名誉教授の藤田紘一郎氏は、今も週に1、2回の講演で全国を飛び回る。講演数は年間50~60本。その体力を養うべく、日課の散歩を欠かさない。歩数は平均1万歩で、多い日は2万歩近いという。

 43歳の記者も取材が相次ぐと2万歩を超えることがあるが、2万歩の日はけっこう疲れる。藤田氏は内田裕也さんと同じ79歳。

 驚異的といったら失礼だが、傘寿目前の男性としては正直、スゴイ。そんな藤田氏の元気の秘密が肉食だ。藤田氏が言う。

「週に2回、必ずステーキを食べます。脂身の少ない赤身の牛肉を100~150グラム。もちろん、豆や魚でタンパク質を摂取できます。しかし、50歳以上は、それらだけでは賄いきれません。肉が必要なのは、そのためなのです」

 30分ほど取材時間を頂いたが、語り口は滑らかで、「えーっと、あれ、なんだっけ」などと言葉がつっかえることは、まったくない。今月17日には福岡での学会発表も、スムーズにクリアしたそうだ。

「この日は、腸内細菌のバランスの良し悪しが、受胎率に影響することが分かってきたことを話しました。僕みたいなロートルが学会発表なんておこがましいんだけど、呼ばれるとうれしくて。ヨボヨボしていられないから、肉を食べて、せっせと歩くんですよ。そうそう、肉を食べないと、栄養失調になりますからね」

 栄養失調? 飽食のニッポンで、そんなことがあり得るのか。それを裏づける研究を行ったのが東京都健康長寿医療センターのグループだ。東京・小金井市と秋田・南外村に住む65歳以上の1048人を8年間追跡し、血清アルブミンの数値と生存率の関係を調査した。アルブミンはタンパク質の摂取状況を示し、数値が高いほどタンパク質をよく摂取しているという。

■魚だけでは「新型栄養失調」に

「アルブミン値が『高い』『やや高い』『やや低い』『低い』の4群で分けると、低い人の生存率が最も悪かった。つまり、タンパク質を十分取れていない人は、長生きできないのです。100歳を越える百寿者研究でも同様の傾向が明らかになっています。ベジタリアンは短命なのです」

 肉を食べると、コレステロール値が高くなりそう……。そんな不安から魚を食べるのは、分からなくもない。しかし、“コレステロール不安”によって、タンパク質そのものの摂取が不足。それでタンパク質不足になるのが、高齢者に広がる新型栄養失調だという。

「アルブミンは、筋肉や血管、免疫などの働きに不可欠。アルブミンが不足すると、認知症のリスクが高まるとする研究結果もあります。新型栄養失調を防ぐには、肉の摂取です。2年前に105歳で亡くなった聖路加国際病院名誉院長の日野原重明さんも、週2回は肉を食べていましたから」

 カッコつけて粗食を貫いたあまり早死にしては元も子もない。元気に生きるには、週2回程度の肉食が必須ということである。

内田裕也さんも病室で食べていた
内田裕也さんも病室で食べていた(C)日刊ゲンダイ

■「太めをキープ」が一番長生き

 メタボがよくないといわれるが、高齢者には当てはまらない。昨年12月に公表された「高齢者肥満症診療ガイドライン2018」には、こんな記述がある。

 高齢者の肥満は、認知症の発症リスクを下げる半面、肥満度を示すBMIが低かったり、体重が減ってきたりすると、認知機能が低下するリスクがある。さらに、高齢者の肥満は、心血管病のリスクになるかどうか分からない――。

 日米共同プロジェクト「長寿社会における中高年者の暮らし方の調査(JAHEAD)」の日本分は、国内の60歳以上の男女6000人を対象に約19年間追跡し、①BMIが標準で、減少傾向②BMIが標準より高めで、減少傾向③BMIが太り過ぎで、一定④BMIがやせ気味で、減少傾向――の4グループに分けて解析している。

 その結果、①グループを1とすると、④グループの死亡リスクは2割高く、③グループは3割低かったのだ。

 長生きするには、太めの体重をキープするのがベターということだろう。