Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

梅宮さん6度で大空さん9度 多発がんを克服する人の共通項

梅宮辰夫と大空真弓
梅宮辰夫と大空真弓(C)日刊ゲンダイ

 驚いた人は、少なくないでしょう。俳優の梅宮辰夫さん(81)が、週刊新潮のインタビューで6度のがんを克服したことを語っていて、話題を呼んでいるのです。

 記事によれば、1974年、30代半ばで睾丸がんが発覚し、左の肺に転移。今から8年ほど前には胃がんが見つかり、3年前の十二指腸乳頭がんは十二指腸と胆のうを全摘したほか、すい臓と胃の一部を切除する大手術を経験しています。そして昨年9月から今年1月にかけて前立腺がん、尿管がんに……。

 私自身、昨年末、膀胱がんを自分で見つけ、専門医にがんであることを告げられたときは、「なぜ、私が」と否認したい気持ちになりました。今でこそ平常心に戻って仕事をしているものの、6度のがんを克服し、前向きに生きていらっしゃるのはすばらしい。

 女優の大空真弓さん(79)は先月末、テレビ番組で「最初、乳がん、(次に)胃がん、乳がん」と告白。9度のがんを乗り越えたそうです。

 壮絶ながん告白が相次いだのはたまたまでしょうが、読者の皆さんは気になったことがあるかもしれません。なぜ、何度もがんの病魔に侵されながら、その都度克服できるのだろうか、と。

 そのヒントは、梅宮さんの記事にあります。

「30年以上前から、僕は血液や心電図、レントゲンの検査を2カ月に1度、継続的に受けてきました」

 幾度ものがんを克服した人は、頻繁に検査を受けて、がんができるたびに早期発見できているのが特徴です。梅宮さんは定期的に受けていた血液検査で前立腺がんが見つかり、その後の検査が尿管がんの早期発見に結びついたといいます。

「(尿管がんは)かなりの早期発見です。手術後の経過観察をきちんとしていたことが功を奏したのだと思います」とは、前立腺がんの主治医の言葉。まさにその通りでしょう。キャスターの鳥越俊太郎さんが、大腸がんの度重なる転移を早期発見できているのは、検査のおかげでしょう。

■厄介なすい臓は肝臓検査で…

 医学の進歩で、がんは不治の病ではなく、早期なら治る病気になっています。それでも、がんという診断を突きつけられることは重い意味があり、決してうれしいことではありません。つらい思いをされている方々にとって、2人の話は励みになるはずです。がんでない人にとっては、早期発見を心掛ける動機づけになるでしょう。

 すい臓がんは難治がんといわれます。そんな厄介者が早期発見されるのは、肝臓がんの治療後が典型です。肝臓がんでなくても、定期的な肝臓のエコー検査などで早期発見できるケースもあります。CT検査を多く受けている人ほどすい臓がんが見つかりやすいという報告もあります。

 CTについては被曝の影響もありますが、前回も触れた通りがんでも一病息災ということはあると思います。がんとうまく付き合うには、予防や念のためという心掛けが大切です。

中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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