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毎年検査で精度アップ 便潜血の大腸がん発見率は3年で97%

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 がんの検査は、CTやPETなどのほか、内視鏡などがあります。最近は1滴で分かる血液検査の精度もグンとアップ。その点でいうと、トイレで便を採取する便潜血検査は、古めかしくて、ちょっと不衛生なイメージでしょう。医学的に大腸がんを見つけるスクリーニング検査として確立していますが、「精度は大丈夫なの?」と疑問に思っている人もいるかもしれません。

 結論からいうと、大丈夫です。便の表面をこすり取って、そこに血液が含まれているかどうかを調べるもの。大腸がんのほかポリープや潰瘍、痔などがあると、出血しますから、陽性だと、それらの病気が疑われます。そのための精密検査が、直腸指診や大腸内視鏡検査です。

 重要なのは、2日分の便を採取すること。2日法で検査すると、進行大腸がんでは90%、早期がんでは50%が発見できるとされます。さらに毎年続けて検査することで、精度は確実にアップ。3年目(合計6回)だと、理論上、97%とほぼパーフェクトに上昇します。

 大腸がんステージⅠの5年生存率は9割超。早期発見できれば、ほぼ治りますから、簡便な便潜血検査を使わない手はありません。毎年、きちんと提出してください。それが大腸がんから身を守る第一歩です。

 そんなメリットをお話ししても、顔をしかめるのが便秘気味の方。自宅にいるときに便意がなく、出社後に催しても、検査キットがなくて採便できません。それで、1日分しか取れず……。そんな話をよく耳にしますが、1回分でも提出してください。それが、陽性ならすぐ精密検査を受けることです。

 大腸がんは、生活習慣病の要素があって、欧米流の食生活や運動不足などが重なると、発症リスクがアップします。メタボと同じ仕組みです。便秘の人は、運動不足や食物繊維が不足した食習慣が影響していると考えられますから、大腸がんになりやすい下地があるといえるでしょう。

 無理にいきむと、切れ痔になりやすい。イボ痔の人も出血しやすい。そういう人は、「便潜血の結果が陽性なのは、痔のせいだろう」と軽く考えて精密検査を受けずにいるケースが少なくありません。

 しかし、先ほど説明した通り便秘の人はそもそも大腸がんになりやすい要素を抱え込んでいますから、陽性反応の結果と痔を短絡的に結びつけないのが無難でしょう。

 血液は高温になると、細菌に分解されてしまいます。採便後は必ず冷蔵庫に保存するのが鉄則。これから気温が上昇しますから、キットを提出するまで長い時間を要する人は保冷剤に入れて持ち運ぶといいでしょう。

梅田悦生・赤坂山王クリニック院長

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