病み患いのモトを断つ

がんを媒介することも…セックスと重大病の気になる関係

飲酒後は危ない
飲酒後は危ない(C)日刊ゲンダイ

 今月12日付の「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」は、ロンドン西部に住む44歳の女性を巡って、興味深い論文を掲載している。その女性は、パートナーのオーラルセックスを受けて絶頂を迎える寸前、失神して救急搬送されたというのだ。セックスに関連して発症する病気について考えてみる――。

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 報告によれば、ベッドインの前に変わった様子はなくいつも通りだったが、“口腔奉仕”の最中に頭痛を訴え、体が硬直したと思ったら、バタッと意識を失ったという。搬送先の病院でCT検査を受けた結果、脳の動脈瘤が破れて出血するくも膜下出血と判明。幸い早期発見だったことから、血管を塞ぐ治療を受けて2週間ほどで退院。今は元気に暮らしているそうだ。

 米心臓協会と欧州心臓学評議会が2013年にまとめた腹上死に関する共同声明では、92・6%が男性。今回は死亡ではないとはいえ、女性はレアケースだ。

 東京都健康長寿医療センターの桑島巌顧問が言う。

「腹上死は、血圧の急上昇が関係します。性行為は運動しているのと同じですから、高血圧や糖尿病などの持病があれば、男女関係なく発症する恐れがあるのです」

 冒頭の論文では、「性交中に動脈内モニターを用いた研究では、セックス中の血圧と心拍は不安定で、絶頂時に急上昇することを示した」としている。男性は歯を食いしばってピストンするのがよくないが、女性によってはピーク時に過呼吸になる人がいる。そういう女性も一時的な酸欠になりやすい。それが“運動”と相まって血圧の急上昇を招くのだろう。

 元東京都監察医務院院長の上野正彦氏がまとめた「ED Practice 2005、性行為と心血管事故の発生の関連から」によると、腹上死が多発するのは「春」で「30、40代の中年層」に多いのは、論文の症例と重なる。死因は「心筋梗塞や心不全が56%、脳卒中が43%」。この女性は飲酒習慣があるが、「ED――」では「3割は行為前に飲酒」していたという。

「受診せずにネットで抗ED薬を使う人がいるようですが、そういう人は危ない。持病がある人はしっかり治療し、飲酒後の行為は控えるのが無難です。春に多いのは、浮気や不倫で興奮が増すせいでしょう」(桑島氏)

■“口腔奉仕”でHPVが喉に感染し…

 セックスは、がんを媒介することもある。米俳優マイケル・ダグラスは中咽頭がんであることを公表。その咽頭がんについて過去には、「咽頭がんの主な原因は、HPV感染だからね」と語っている。

 HPVは女性の子宮頚がんの原因ウイルスとして知られるが、オーラルセックスでそれが喉に感染すると、咽頭がんのリスクが増す。米国では60~70%、日本では半数の咽頭がんが、HPVが原因とみられる。HPVによる中咽頭がんは、ほかの原因の咽頭がんに比べて抗がん剤が効きやすいから喉の痛みや声の出にくさなどは放置しないのが無難だろう。

 HPVを巡っては、膀胱がんのリスクを上げるという報告もある。つまり、男女に共通するがんの原因で、海外では、女性はもちろん、男性もHPVのワクチンを接種する国もある。

 パートナーとの別れを惜しんで、あるいは新たな出会いを喜んでハッスルするのはいいが、セックスが思いもよらぬ病気を呼び寄せることがあることは頭に入れておくべきだろう。

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