後悔しない認知症

高齢の親の「対象喪失」状態を軽く考えてはいけない

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 認知症と診断されるかどうかにかかわらず、高齢者はそれまでの快活さを忘れ、急に塞ぎ込んでしまうことがある。たとえば、仲の良かった同世代の友人が亡くなったりすると、そうした状態に陥ってしまう。長年可愛がっていたペットの死でもそうなる可能性がある。いわゆる「ペットロス」である。

「対象喪失」という言葉がある。自分にとってかけがえのない存在が失われることをいう。年齢を重ねるとそうした機会が増えていくわけだが、高齢の親の対象喪失状態を「ちょっとボケた」とか「初期の認知症状」などと軽く考えてはいけない。

 長年連れ添った伴侶はもちろん、年齢の近い兄弟姉妹、あるいは最愛のペットの死によるショックは、高齢者に大きな心理的ストレスを与える。急激に気力が失われたり、心身ともに一気に老け込んでしまったりする。見過ごすと老人性うつに陥ってしまうことがあるから要注意だ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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