これで認知症介護は怖くない

症状が進んでも人間の感情的な部分はちっとも変わらない

症状は重くても感情的な部分は変わらない(提供写真)

 ある認知症当事者に話を聞いていると、その方から「あんたは早口で分からない」と言われたことがあった。こちらは普通にしゃべっているつもりなのに、この人には私が2倍速でしゃべっているように聞こえるそうである。

 ところがどういうわけか、本人がしゃべるときは普通のスピードなのだ。なぜそうなるのかは、本人も分からないそうである。

「この人なら聞いてくれるはず」と分かれば、当事者は必ずしゃべってくれる。ただし、認知症の人にも見えがあり、時には作話もあるのですべて真実とは限らない。

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奥野修司

奥野修司

▽おくの・しゅうじ 1948年、大阪府生まれ。「ナツコ 沖縄密貿易の女王」で講談社ノンフィクション賞(05年)、大宅壮一ノンフィクション賞(06年)を受賞。食べ物と健康に関しても精力的に取材を続け、近著に「怖い中国食品、不気味なアメリカ食品」(講談社文庫)がある。

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