長引く咳は喘息の前段階…まずは疑うべき3つの疾患とは

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 今の時季、インフルエンザや風邪、花粉症で咳は比較的“身近な”症状だが、ほかの症状は治っているのに咳だけが2週間以上続く場合は、ほかの原因を疑ったほうがいい。よくある3つの疾患について、呼吸器内科専門医の池袋大谷クリニック・大谷義夫院長に話を聞いた。

「咳に加えて高熱があれば、ほとんどの人が医療機関を受診するでしょう。しかし、ほぼ咳だけの場合は放置してしまいがちです。早めに受診していれば……というケースも珍しくありません」

■咳喘息

 長引く咳で最もよく見られる原因が「咳喘息」だ。咳喘息は、気道が狭くなり、さまざまな刺激に過敏になった状態で、一般的には痰を伴わない咳が続く。ゼイゼイ、ヒューヒューといった喘鳴や呼吸困難はない。肺機能検査や呼気NO検査などで調べられる。あるいは、ほかの疾患がないことを検査で確認した上で、治療に進むこともある。

 この咳喘息は、喘息の前段階ともいわれる。咳喘息の段階であれば吸入ステロイドで完治が見込めるが、治療が遅れて喘息に移行すると、喘息は治らないため、一生付き合っていかなければならない。だからこそ「早めに受診していれば」なのだ。咳喘息の3割が喘息へ移行する。決して少ない数字ではない。

 咳喘息の治療は、ガイドラインでは「吸入ステロイドを2年」とされている。しかし、大半の患者は、数カ月の吸入ステロイドの使用で咳が止まる。

「呼吸器内科医の仲間ともよく話題になりますが、咳が治まったのに吸入ステロイドを2年使い続けるというのは現実的ではありません。また、2年使ったからといって“再発しない”というエビデンスはないのです。そこで私は、患者さんの咳が出なくなり、検査データが正常であれば、薬をやめて様子を見るようにしています」

■副鼻腔炎

 花粉症シーズンに悪化しがちなのが、副鼻腔炎だ。これは呼吸器疾患と密接な関係があることが指摘されており、気管支が広がって元に戻らない気管支拡張症を合併しているケースが多い。CT検査などで分かる。

「副鼻腔炎と気管支拡張症の合併で、日常生活に支障が出るほど咳がひどくなることも。この場合、痰を伴う咳です。少量のマクロライド系抗菌薬で治療ができ、QOLがかなり改善されます」

 副鼻腔炎にはいくつかタイプがあるが、近年、増加しているのが好酸球性副鼻腔炎だ。もし「喘息の治療をきちんと受けているのに、しばしば咳がひどくなる」場合、好酸球性副鼻腔炎の疑いがある。好酸球性副鼻腔炎は喘息との関わりが強く、one airway one disease(気道に生じた同じ炎症の病気)という概念にも含まれるようになった。好酸球性副鼻腔炎の治療が不十分であれば、喘息のコントロールも不十分になる。 

■胃食道逆流症

 胃の内容物が食道に逆流する胃食道逆流症も、長引く咳の原因として多数を占める。肥満、喫煙、猫背、ストレス、腹部を締め付ける、食べ過ぎ、寝る直前の食事、脂肪の多い食事、アルコール、炭酸飲料などが胃食道逆流症に関係している。

「特に、肥満は胃食道逆流症を起こしやすい。咳がひどい時は吸入ステロイドを使い、PPI(プロトンポンプ阻害薬)をはじめとする胃酸の分泌を抑える薬などで胃食道逆流症の症状は改善しても、肥満がそのままでは再発を繰り返しかねない。減量を第一にし、そのほかの胃の内容物の逆流を起こしやすい生活を改めるべきです」

 なお、胃食道逆流症の患者のうち年間1~2%の確率で、食道の粘膜が胃の粘膜と同じ組織に置き換わる「バレット食道」が発生するといわれており、食道がんの一種「バレット食道がん」のリスクがあると指摘されている。

関連記事