「自分が死ぬ」準備

断食で“若返り遺伝子”活発に どれくらいの期間抜けばいい

榎木孝明さん、さすがにお若い!
榎木孝明さん、さすがにお若い!(C)日刊ゲンダイ

 同じ70歳でも50代に見られる人もいれば、逆に年より老けて見える人もいる。そのメカニズムが長生き・若返り遺伝子と呼ばれる「サーチュイン遺伝子」にあることが分かっている。このサーチュイン遺伝子を増やすには「断食」が効果的だ。

 夜明け前の午前4時半に体験者たちはぞろぞろと布団を畳み始める。午前5時半には大本堂で護摩祈祷の列に加わり、所願成就を熱心に祈る。以降は写経をしたり思い思いに過ごし、夜10時の消灯で床に就く。

 成田山新勝寺で一般向けに行われる「断食参籠修行」の内容だ。2泊3日~6泊7日の間、体験者は水以外を一切とってはいけない。

 これはあくまで心身鍛錬のための修行だが、“断食”が健康にとって有効だという医学論文が次々に出ている。

 日本では4年前に俳優の榎木孝明さん(63)の1カ月断食が話題になったが、それほどハードな絶食でなくとも効果は期待できる。

 米国インターマウンテン医療センター(ユタ州)が興味深い報告をしている。同地ではモルモン教徒が人口の6割を占めるが、教義上、毎月初めの安息日(日曜)に水以外を口にしない。信者たちを調べてみると、同じ地に暮らす一般住民に比べ、心臓病の発症率が39%、糖尿病は52%も低いことがわかった。1カ月に1回の断食でこれだけの違いが出てくるというわけだ。

■48時間の断食で2~4倍に

 国内で断食といえば、ダイエット目的が大半だが、なかなかどうしてバカにできない。

 というのも、若返り遺伝子と呼ばれる「サーチュイン遺伝子」を活発化させることが期待されているのだ。金沢医科大学の古家大祐教授がマウスを使って「ミトコンドリア制御による抗老化対策」を調べてみたところ、サーチュイン遺伝子に新しいミトコンドリアを増やす“スイッチ”の役目があることがわかった。老化に伴い、ミトコンドリアは減少する。つまり、サーチュイン遺伝子を活性化させれば老化のスピードを遅らせることができ、その手っ取り早い方法というのが“断食”というわけだ。

 古家教授はこれが人間にも当てはまるのか、次にヒトで実験。必要摂取カロリーから25%減らした食事を7週間続けさせたところ、サーチュイン遺伝子の働きが最大で10倍、48時間の断食でも2~4倍も増えたという。古家教授は「サーチュイン遺伝子は免疫細胞を活性化させたり、血管の老化、傷ついた遺伝子修復機能も考えられる」と言うのだ。

 サーチュイン遺伝子が筋肉や血管などさまざまな細胞に「働け!」と指令を出すのだが、面白いことにサーチュイン遺伝子は空腹の時でしかスイッチが入らない。ということで、断食すればいいわけだ。

 では、健康のためにはどれくらいの期間、断食すればいいのか? 米イリノイ大学シカゴ校の肥満者対象の調査では、夜6時以降、朝10時まで(16時間)何も食べないと、12週間で体重が平均3%、最高血圧が7㎜Hg低下した。この調査のミソはカロリー制限がなく、それ以外の時間は好きなだけ食べていいことだ。

 米マサチューセッツ工科大の動物・細胞実験では、24時間の絶食で幹細胞の再生能力が2倍になった。がん予防が期待されるわけだ。

 月に1回24時間、はたまた夜は食べないと違いはあるが、「若くなったね」と言われるために断食道場に通うのも手だ。

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