これで認知症介護は怖くない

「どうせ分からない」小ばかにしていると信頼は生まれない

耳を傾けることが第一歩(提供写真)

 介護する人とされる人に信頼感がなければ、コミュニケーションが難しくなり、どんな介護もうまくいかないだろう。

 五感を使えということは、裏を返せば、接し方も人それぞれだということだ。

 例えば、「ユマニチュード」という介護の方法がある。テレビでもよく紹介されるから、知っている方もいるだろうが、寝たきりの人が立ち上がったりする場面が報じられたりして「魔法のようなケア」と言われるようになった。

 そのケアの方法は、優れた介護職なら目新しいものではないが、それを体系化したことは素晴らしい。が、決して万人に通じるケアではないと思う。

 介護する家族にとって大事なのは、立派なケアのマニュアルではなく、介護される人に耳を傾けること。それが第一歩なのだ。

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奥野修司

奥野修司

▽おくの・しゅうじ 1948年、大阪府生まれ。「ナツコ 沖縄密貿易の女王」で講談社ノンフィクション賞(05年)、大宅壮一ノンフィクション賞(06年)を受賞。食べ物と健康に関しても精力的に取材を続け、近著に「怖い中国食品、不気味なアメリカ食品」(講談社文庫)がある。

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