天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

医師の考えを押し付けて透析中止に誘導するのは許されない

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

「透析はつらいうえに寿命が縮まる」という悪いイメージを抱いている人も少なくありませんが、一概にそうとも言えません。透析を受けていることで、それまで抱えていた生活習慣病を早く発見できて悪化を防げるケースもあります。また、とりわけ胸を開く心臓手術では、透析を受けている患者さんよりも、透析導入前で腎機能がどんどん悪化している段階の患者さんの方が手術成績は悪くなります。これは研究論文でもたくさん報告されていますし、自分の経験からも明らかです。中途半端な状態よりも、透析まで進んでしまった方が結果は良好な場合が多いのです。

■サポートが手厚い日本の透析医療は“文化”として根付いている

 腎機能の悪化は動脈硬化につながるため、腎臓と心臓疾患は深い関係にあります。これまで私も透析の患者さんを数多く診てきました。そうした経験から、患者さん本人が透析を拒否するケースはそうそうありません。患者さんに透析導入の打診をしたとき、「え、透析はちょっと……」と拒否する人は80代後半から90歳以上の超高齢者がほとんどです。それよりも下の世代の患者さんは、透析が必要だとなれば「お願いします」とスムーズに運びます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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