なぜかといえば、それだけ日本の透析医療は手厚いサポートがあることを知っている人が多いからです。公的助成制度が確立している医療費だけでなく、身体障害者手帳を取得した場合は税金の免除や交通機関の割引など、福祉の面でもさまざまな助成を受けられます。
これが、たとえば抗がん剤治療だった場合、医師が「よく効く薬があるんですが、かなり高額で自己負担が増えますよ」と伝えると、「これまでと同じ抗がん剤でお願いします」という患者さんが一定の割合でいるでしょう。しかし、透析は、「高い治療費がかかるんですよね?」とたずねてくる患者さんはまずいません。透析は、身体的なもの以外の負担が軽減される手厚い体制が整っているうえ、フリーアクセスで治療を受けられることを国民の大多数が知っているのです。
それくらい成熟した“文化”として根付いてきているのに、非常に限定された地域の中で、「透析はこんなにつらいんですよ」とか「透析になったら生きていないのも同然ですよ」といったような誤解を招く知識を患者さんに提示し、透析を選ばないように誘導するのは許されないことです。仮に今回の福生病院もそうだったとすれば、透析を導入する前の段階で切り捨てられた患者さんは不幸だったとしか言えません。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」