認知症の人とどう接するかとは、「認知症の人をどう見ているか」という問題でもある。
「もはやぼけて人間ではない」と見ているなら、認知症の人は人間として扱われないだろう。20年ほど前に、ある精神病院の大部屋に数十台のベッドがずらっと並べられ、そこに認知症の高齢者が両手を縛られて寝かされているのを見た。おぞましい光景だったが、過去には医療に従事する人でさえ認知症の人を人として見ていなかったのだ。
島根県出雲市にデイケア「小山のおうち」という重度認知症の人を対象とした事業所がある。ここには重度の人たちが書いた作文がある。その一部を紹介したい。
〈物忘れは悪い事です 情けないことです 物忘れは人にめいわくかける事はない〉
〈好きで忘れたりウロウロしているわけじゃないことを知ってほしかった〉
〈毎日の物忘れ なんとかなりませんか? さっき話した事もすぐ忘れてしまう。自分自身が残念で、くやしいです〉
これで認知症介護は怖くない