話題の焦点

ブラピも公表した「人の顔が覚えられない」それは病気かも

写真はイメージ
写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 春。出会いのシーズンに「人の顔が覚えられない」と憂鬱になるあなたは、「相貌失認」という病気かも。俗に「失顔症」ともいわれるが、俳優のブラッド・ピットが2013年に告白したことで知られるようになった。「相貌失認」について、大阪市の「上本町わたなべクリニック」渡邊章範院長(総合診療医)に聞いた。

「一般の人は、目・鼻・口といった顔のパーツの位置関係を、瞬時に判別・分類し、記憶しています。一方、『相貌失認』の人はこのような機能が低下しているために、顔での人の識別ができません。そのため、髪形や顔の形、ほくろの位置、体形や性格、においやしぐさなどの情報を総合的に捉えて、『この人は誰か』と見分けているのです」(渡邊院長)

 事故やケガ、脳の病気で起こる「後天性相貌失認」の患者や、人の区別がつかないほどの重度の患者は、本人も周囲も気付きやすい。しかし胎児期の脳形成の過程などで、人の顔をすばやく認識する機能が低下する「先天性相貌失認」は生まれつきのため、本人が無自覚である場合が多い。さらに家族や親友、頻繁に会う人については認識できるという軽度の人も多く、「相貌失認」は100人に1人程度の割合でいると推定されている。「隠れ相貌失認」は意外と多いのだ。

「映画などで、登場人物の顔を一度で覚えられない人や、接客業に困難を感じる人は、相貌失認の可能性があります」(渡邊院長)

 相貌失認かもしれない、と心療内科を訪れた場合、どのような診察を受けるのだろうか。

「まずは、本当に相貌失認かどうかを調べます。1つ目は、そもそも顔を見ているのか。病気と関係なく、人の顔を見るのが苦手、人の顔に興味がない、という人は意外と多いからです。2つ目に、記憶力全般の能力検査。3つ目に、他の病気ではないのか。統合失調症などの心の病気かどうかを調べます」(渡邊院長)

 その上で、相貌失認であった場合は、トレーニングを行う。先天性の場合、完治は難しいが、改善は十分可能だという。顔以外の情報や、顔のパーツの特徴で識別するクセをやめ、「目・鼻・口の位置関係」で識別できるように鍛えるのだ。

「当院では、映画を使ったトレーニングを行っています。なるべく特徴の少ない顔の役者に注目し、その人の『目・鼻・口の位置関係』をひたすら追いながら、繰り返し観賞します。英単語を覚えるのと同じで、繰り返し『覚えよう』と努力することで、改善が期待できます」(渡邊院長)

 自分が相貌失認かも、と思い当たる人は、まずは心療内科に行ってみてはいかが。

関連記事