Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

吉田拓郎さん喉のがん告白…放射線治療の期間は短縮傾向に

喉のがんを告白したシンガー・ソングライターの吉田拓郎(C)共同通信社

 ビックリされた方も少なくないでしょう。シンガー・ソングライターの吉田拓郎さん(72)が、自らのラジオ番組で喉のがんにかかっていたことが報じられました。私もファンのひとりだけに、驚いています。

 その後の報道によると、診断されたのは2014年。声帯に白板症という変化が発見され、これに関連して「放射線治療が2カ月間、始まりました」と吐露。治療の後遺症で、食事が喉を通らず、声は出ず、喉の痛みで、「半年間は苦痛の日々でした」と語ったといいます。

 ニュースに触れて、ちょっと気になることがありました。後遺症が半年も続いたことです。

 声帯にできる喉頭がんの治療は、病期によって異なりますが、手術より放射線治療が選ばれることが普通です。早期なら、治療成績は手術も放射線も同等。発声の機能は、生活する上でとても大切ですから、治療成績が同じなら放射線を選ぶのは合理的でしょうが、仮に早期の喉頭がんとすれば、放射線治療の後遺症が半年も続くことはまずありません。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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