病み患いのモトを断つ

天海祐希も経験 「健診で異常なし」の狭心症の見つけ方

“姿を隠した狭心症”かも(左は女優の天海祐希)/
“姿を隠した狭心症”かも(左は女優の天海祐希)/(C)日刊ゲンダイ

 明け方になると、胸が痛む。まさか……。何となく不安になってもしばらくすると、治まる。会社の健康診断で医師に相談しても異常なし。医者にそう言われたら、「年のせいかな」と軽く考えてしまうだろうが、胸の痛みはやっぱり放置しない方がいい。東京都健康長寿医療センターの桑島巌顧問(循環器内科)に聞いた。

「胸の痛みは狭心症の典型的な症状です。その狭心症は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病による動脈硬化で引き起こされるのが一般的ですが、中には動脈硬化がなくても生じることがある。それが冠攣縮性狭心症で、狭心症全体の4割。動脈硬化の狭心症は、走ったり、階段を上ったりした動作時に発症しますが、冠攣縮性は夜間や早朝、明け方などの安静時に発症します。安静時狭心症というのはそのためです。冠攣縮性狭心症も、突然死につながるので要注意です」

 6年前の5月6日、女優の天海祐希(51)が軽度の心筋梗塞で病院に救急搬送。その2日後、出演中の舞台の降板が発表された。心筋梗塞というと、タレントの松村邦洋(51)やアナウンサーの徳光和夫(78)などが発症していて、メタボとの関連性が強いといわれる。元タカラジェンヌの天海はメタボとは無縁のスリム体形だけに、冠攣縮性狭心症による心筋梗塞だったとみられる。

「冠攣縮性狭心症は、男性に多いものの、女性や若い人でも発症します。原因は、心臓を養う冠動脈の痙攣による虚血です」

 痛みの持続時間は、数十秒から数分まで。その間はつらくても、治まると何事もなかったように生活できるため、ついつい軽く考えて治療を先延ばしにしやすい。

■9%は3年後に心筋梗塞に

「健康診断など痛みがない時に受診して心電図検査を受けても、異常が見られない」というから、なおさらだろう。

 冠攣縮性狭心症の人が3年後に心筋梗塞を発症する割合は9%。欧米の25%より低いとはいえ、見逃せない。“姿を隠した狭心症”をうまく見つけて治療するすべはないものか。

「CT検査で冠動脈の硬化がないことが確認されたら、通常の心電図ではなく、24時間心電図検査を行います。寝ている時や明け方に胸痛や息切れ、動悸、胸の圧迫感などがあれば、特徴的な波形が記録される。そんな波形が見つかると、カルシウム拮抗薬や硝酸薬を処方。それらを服用すれば良くなります」

 発症には、飲酒や喫煙、不眠、ストレスなども密接に関わっていて、「女性の場合は、特に喫煙とストレスの影響が強い」という。

「こうしたリスク因子をつぶす生活改善で、発症をゼロにすることは難しいのですが、適量飲酒や禁煙は欠かせません。健康な外科医が手術明けの高揚感で深酒して、明け方に発症することは珍しくありませんから」

 動脈硬化がないことが基本だが、動脈硬化を合併している人もいる。そういう人はステントなどで動脈硬化した部分を治療した上で、カルシウム拮抗薬を服用する。自分勝手に薬の服用をやめると、再び発作に襲われるので要注意だ。

「ポイントは、安静時の胸の痛みや動悸などの違和感です。そのような症状がある人は、循環器内科で24時間心電図検査を受けるといいでしょう」

 用心の上にも用心だ。

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