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家庭用血圧計は3000万台売れたが…自宅で測らない選択肢も

(C)日刊ゲンダイ

 家庭用血圧計は日本でも3000万台以上売れているというデータがあります。1人で何台も買っている人もいますから、普及率がどれくらいかは不明ですが、何十%というレベルには達しているのではないでしょうか。

 私自身がどうかというと、家庭用血圧計は持っていません。血圧を測ったのはこの1年で1回だけです。その1回も自ら測ったわけではなく、私が目の結膜に出血して真っ赤な目をしていた時に、心配した看護師が無理やり測ってくれたという状況です。その前に測ったのは、さらにその2年前くらいに、親知らずの抜歯の際に歯科で血圧を測ってもらったくらいです。

 それに反して、自分自身の外来に通っている高血圧の患者の7~8割は毎日自宅で血圧を測って手帳に記録して、毎回持ってくるという人たちです。

 もちろんそのデータによって薬の調整をしているわけで、クリニックでしか血圧を測らない人は困った患者さんという位置づけだったりします。

「この態度はダブルスタンダードではないか」と言う人もいますが、「その通り」とお答えするしかありません。しかし、私の中でこの態度の違いに矛盾はありません。自宅血圧を測りたくないという患者も許容しますし、自分自身も毎日血圧を測る選択肢を持ったうえで測っていないだけです。

 重要なのは、自宅血圧を測ることではありません。あくまでも家庭用血圧計があることで、自宅で血圧を測るという選択肢が増えたことに過ぎません。だからといって自宅で測らないという選択肢がなくなるわけではないのです。重要なのはどちらを選択することも可能ということであり、血圧を測るということではないのです。そういう意味で私のなかではこの2つの態度に矛盾はないのです。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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