更年期を知って夫婦円満

ホルモン補充療法が乳がんリスクに与える影響は小さい

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「女性の健康はエストロゲンに守られている」といっても過言ではないほど、女性の健康を支えています。そのエストロゲンが閉経により減少すると、骨粗しょう症、脂質異常症、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞など、大きな病気の原因になる可能性があります。

 一方で、減ったエストロゲンを補充する治療法、HRT(ホルモン補充療法)は、乳がんになるリスクが高くなると耳にしたことがある方もいると思います。エストロゲンが減少して大きな病気になるリスクがあるが、減った分を補充しようとすると乳がんリスクがある――。では、女性はどうすればよいのでしょうか?

 HRTに限らず、どんな薬でも副作用やリスクは付き物ですが、どちらのリスクを取るべきかは迷うところです。実際のところ、HRTで乳がんリスクは上がるのか? 日本産婦人科学会、日本女性医学学会が監修する2017年度版の「ホルモン補充療法ガイドライン」では、次のようにしています。

①乳がんリスクに及ぼすHRTの影響は小さい

②HRTによる乳がんリスクは、主として併用される黄体ホルモンの種類とHRTの施行期間に関連している

③乳がんリスクはHRTを中止すると低下する

 つまり、エストロゲンを黄体ホルモンと併用すれば、施行期間とともに乳がんリスクが上昇する。しかし、そのリスク値は高くはなく、アルコール摂取、肥満、喫煙などによる乳がんリスクと同程度かそれ以下。かつ、HRTの期間が5年未満であれば有意な上昇は見られず、HRTを中止すれば乳がんリスクは低下するのです。

 もし、骨量低下や脂質異常症などの診断を受けたなら、期間限定でHRTを行うのもあり。HRTを行う場合、少なくとも1年に1回、乳がんを含む婦人科検診を受ければ、早期発見を期待できます。さらに、子宮を摘出した方が行うエストロゲンのみの治療では、上記のリスクは該当せず乳がんを減らすという報告もあります。

小林ひろみ

小林ひろみ

メノポーズカウンセラー。NPO法人更年期と加齢のヘルスケア会員。潤滑ゼリーの輸入販売会社経営の傍ら、更年期に多い性交痛などの相談に乗る。

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