これで認知症介護は怖くない

介護のために同居を始めると父親との関係がギクシャクした

(提供写真)

 だんだんと父親は不機嫌になり、大声で怒鳴るか、全く口を利かないかだった。ときには楽しいはずの食事中に、いきなりお茶碗を投げつけることもあった。

 どちらにしても普段の父親からは想像もできない。ネットで調べたり、必死に介護しているつもりの佐藤さんは、なぜそんなことになるのか、いくら考えても分からなかった。

 デイサービスは週に5日間で、休日は休みなのに、父親は出ていこうとする。なだめても出ようとするので、とうとう玄関を開けられないようにしてしまった。

 症状が進んだのかと思い、ある日の朝、迎えに来たデイサービスの職員にそのことを伝えた。すると、職員は何度も首をひねり、「うちの施設では楽しそうだし、大声を出したことは一度もありませんよ」と言った。

 父親は、なぜ不機嫌になったのだろうか。次回はその理由を分析してみる。

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奥野修司

奥野修司

▽おくの・しゅうじ 1948年、大阪府生まれ。「ナツコ 沖縄密貿易の女王」で講談社ノンフィクション賞(05年)、大宅壮一ノンフィクション賞(06年)を受賞。食べ物と健康に関しても精力的に取材を続け、近著に「怖い中国食品、不気味なアメリカ食品」(講談社文庫)がある。

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