後悔しない認知症

快感が忘れれらず…買い物依存症の老親は愛情に飢えている

写真はイメージ

 高齢の親が、家で不足してもいないものを買ってきてしまうことはないだろうか。購入品は麺つゆ、卵、ひげ剃り用の替え刃など、人によってマチマチだが、なかには、石油ストーブを買い込んでしまう高齢の女性もいた。

 そのほとんどが軽度認知障害、認知症の症状が認められる人だ。こうした「買い物依存」的な行動を読み解くと、背後に「日常生活において、自己愛が満たされていない」という状況が見えてくる。買い物に行けば、店員は親切な言葉、優しい態度で応対してくれる。「一度言われたことをすぐ忘れ」「思ったことを的確に伝える」能力が衰えても、相手は客だと思っているから、きちんと接してくれる。高齢者は、そうしたコミュニケーションによって、自己愛が満たされていると感じるのだ。

 笑顔で「ありがとうございました」と言われ、買うアイテムが着るものであれば、「よくお似合いですよ」と自分を機嫌よくさせてくれる。この快感が忘れられず、「買い物依存」に陥るわけだ。

1 / 3 ページ

和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

関連記事