もちろん、同じものをいくつも買う行為の原因としては、老化による記憶の消失があることは間違いない。
さらにこの行為の心理的背景として、ある特定のものに対する、その人の強い執着心がある。「麺つゆは便利だ」「卵は安くて栄養がある」「無精ひげはみっともない」といった強い思いが特定のものへの執着心につながっていく。
石油ストーブを買い続けた認知症の女性は、新潟県出身だった。おそらく、寒さに対する強い警戒心が彼女をそうした行動に駆り立てたのだろう。認知症の場合、若いころに定着した記憶は消えないが、「同じものをすでに買ってある」という新しい記憶はすぐに消失してしまう。だから、同じ買い物を繰り返してしまう。
■そこに付け込む詐欺にも注意
こうした「買い物依存」の対象が100円ショップの商品なら、まだいい。しかし、高額なものとなると経済的な問題も発生する。
後悔しない認知症