後悔しない認知症

快感が忘れれらず…買い物依存症の老親は愛情に飢えている

写真はイメージ

 ちなみに、認知症によって「買い物依存」的傾向が看過できなくなった場合、成年後見制度を利用して「補助」「保佐」の認定を受けると、補助人や保佐人の同意がないと商行為が成立しないという法律もある。

 では、高齢の親の「買い物依存」を回避するにはどうすればいいのか。

 まず、親にメモ、日記、家計簿などに買い物の記録を残させるようにすることだ。あるいは、リビングの壁などに購入した物のリストを貼っておく。記憶の消失にすぐに改善が見られなくても、子どもが「読んでみて」と記録を読み直すように促してあげればいいのである。

 これをルーティン化することが脳を働かせる機会を増やすことにもつながっていく。

 そして、なによりも大切なことは、日ごろから親子のコミュニケーションを停滞させないことだ。それが高齢の親を機嫌よくさせ、自己愛を満たすことになる。理解力、表現力に衰えがみられても、子どもは受容してあげること。それが、高齢の親の「買い物依存」を回避する最善の策だ。

 昨今、高齢者を対象とした詐欺事件が後を絶たない。同じ高齢者が複数回被害にあうこともしばしばだ。これは、親子のコミュニケーション不足によって、自己愛が満たされない高齢の親の心情、そこから生じた「買い物依存」に付け込んだ犯人グループの新手の犯罪という見方もできなくはない。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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