また、透析を行うと血管の壁にカルシウムとリンが沈着するため、血管が石のように硬くなる異所性石灰化が起こり動脈硬化が進みます。胃潰瘍や皮膚疾患などさまざまな病気が表れるケースもあります。そういったことから、「透析を始めたからこんな病気になってしまったんだ」という被害者意識が芽生える人も少なくないのです。
中には、透析を始めた後で急性心筋梗塞や脳出血を起こしたり、進行がんが見つかって手術などの本格的な治療が必要になった際、「透析でここまで生きてきたから、もう治療は結構です。手術が成功しても、また透析をしなければならないんでしょう?」と積極的治療を望まない患者さんもいます。
しかし、それでも医者としては、治療の重要性や有効性を手を替え品を替え説明するべきです。それも1人ではなく複数の医療者がそれぞれ患者さんと向き合い、きちんとした正しいエビデンスに基づいて見解を示す必要があります。それを大前提にしたうえで、自分の経験談を付け足しながら「手術で病気がよくなれば、これから透析も進歩するから負担が少なく暮らせますよ」といった説明をすると、思い直して積極的に治療を受けようという気持ちになる患者さんもいます。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」