さらに、透析患者に対する国からの医療費補助が手厚いため、病院側は透析患者を抱えていれば“取りっぱぐれ”を防げます。そのため、「透析病院」と呼ばれる施設はこれまで経営的に潤っていた事実がありました。そうした実情を把握した国は透析の診療報酬を少しずつ下げるなどして調整を試みていますが、透析患者が病気の宝庫であることは変わりません。総合病院にとっては経営的に“大事にすべき”患者といえるのです。
ただ、将来的に想定外の疾患が出てきて苦労したり、使いたい薬が使えない状況で手術を強いられるなど、多くのトラブルを抱えることを嫌がって、最初の入り口の段階で透析患者を受け入れない施設もあります。こうした透析をめぐるさまざまな問題点が、福生病院で起こった事例の背景にあったのは間違いないでしょう。
それでも、患者さんの命を守るためには、透析治療をどこかの誰かがやらなければなりません。患者さんの利益を考えると、なるべく経験値の高い医者や施設が手掛けるほうがいいに決まっています。だからこそ、われわれは透析治療を避けることなく取り組んでいるのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」