100年老けない脳の作り方

長寿の静岡で「お達者度」トップ 川根本町の“サロン”とは

静岡県川根本町。茶畑と大井川を眺めながら川根茶縁喫茶「相藤園」の縁側で。右はダム湖に架かるレインボーブリッジ
静岡県川根本町。茶畑と大井川を眺めながら川根茶縁喫茶「相藤園」の縁側で。右はダム湖に架かるレインボーブリッジ(C)共同通信社

 健康で元気な老後を過ごしたければ、脳の若さは保っておきたい。それには、よもやま話に花を咲かせたり、いろんな遊びを楽しんだりするのが有効だ。静岡県の川根本町のケースは大いに参考になる。

 静岡県の北部にあり、90%が森林という川根本町は、人口7000人ほどの小さな自治体だ。

 その半数近くの47.5%は65歳以上で、高齢化率は西伊豆町に次いで高い。

 ただし、65歳から元気で自立して暮らせる期間を算出した「お達者度」を見ると、男性は19.29で県内トップ、女性は22.0で2位と、いずれも上位につけている。高齢者が多いものの、みんな元気で暮らしているわけだ。

 もともと静岡県は健康寿命で全国トップクラスを誇っている。厚労省が都道府県別に実施した調査では、2010年、13年、16年と3回連続で男女とも2位。それを牽引しているのが、川根本町の高齢者なのだ。

 町では1999年から高齢者の引きこもり対策や介護予防を目的にした事業を行っている。「ふれあい・いきいきサロン」と呼ばれるもので、町内のそれぞれの地区で1~2カ月に1度のペースで開催。地区は全部で30以上あるので、町内では年間200~300回ぐらいサロンが開かれていることになる。

「輪投げや風船バレー、手足の体操などの簡単なレクリエーションをやることもあれば、花見や遠足を楽しんだりすることもあります。メニューは地区によってさまざま。お年寄りの方が楽しめることを提供しています」(川根本町社会福祉協議会の担当者)

 ほかの自治体などでもやられているメニューの情報を集め、それぞれの地区で共有する取り組みも行っているそうだ。その結果、「多い時は50~60人、少なくても10人以上は毎回参加しています」(前出の担当者)というほど人気のイベントになっている。

■ワーキングメモリーが鍛えられる

 諏訪東京理科大教授の篠原菊紀氏(脳科学)は、「人と交わって体を動かすことは脳にとってプラス。人と交わることが多い方が認知症になりにくいという調査結果は数多く報告されています」と言う。

 顔見知りで集まれば、よもやま話にも花が咲く。これも脳を活性化させる。

「会話をしているとき、人間は“ワーキングメモリー”を盛んに使っています。ワーキングメモリーとは、記憶や情報を一時的に保持し処理する能力のことで、脳の前頭前野の働きと関係しています。料理をしたり、趣味を楽しむときも、もっとおいしくしようとか、より良い成績を残そうとか考えるため、ワーキングメモリーが鍛えられるのです」(篠原菊紀氏)

 前頭前野を使っていないと、短期的な情報の処理能力が低下し、物忘れが激しくなる。

 コーヒーを飲もうと思って立ち上がったとき、雨が降っていることに気づいて窓を閉めているうちに、何をしようとしていたのかを忘れてしまう――。これもワーキングメモリーの低下が招く老化現象だ。

 人と触れ合い、体を動かすことで、脳の老化に待ったをかけられる。休みの日だからと家でゴロゴロしている人は、脳もどんどん衰えていくのだ。

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外出もプラス(C)日刊ゲンダイ

■大都市別健康寿命トップは浜松市

 大都市の健康寿命についての厚労省調査によると、2010年、13年、16年と連続して浜松市がトップになっている。推定値(男性)はそれぞれ72.98、72.86、73.19となっている。73歳ぐらいまでは、若いころと同じような日常生活を過ごしているようだ。

 反対に短いのは大阪市で、こちらも連続して最下位だった。68.15、67.92、69.20と、いずれも70歳に届いていない。

 上方が得意とする笑いは健康にいいとされ、人懐っこいオジサン、オバサンが多く、ワーキングメモリーが鍛えられていそうだが、ほかの要因があるのかもしれない。

 東京(都区部)は16年が71.89で、20都市の中で11位。可もなく不可もなくというところだ。

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