病み患いのモトを断つ

ストレスで下痢に…予防に白菜が○でキムチが×の理由とは

異動のストレスで悪化…
異動のストレスで悪化…

 通勤中のサラリーマンが脂汗を流して、漏れるかも……。下痢止めのテレビCMで描かれたような経験は、誰しもあるはず。下痢と便秘は、相反する症状ながら、どちらも腸の動きとストレスが影響していて、過敏性腸症候群(IBS)という病名でくくられる。人事異動などでストレスが増すこの時期は、特に悪化しやすい。

「腸内細菌には、善玉菌と悪玉菌がいます。下痢も便秘も、悪玉菌が優位で、善玉菌を増やすことは効果的です。ところが、その善玉菌も過剰に増えると、やっぱりよくない。発酵食品のヨーグルトや納豆、キムチなどはIBSの改善を期待して積極的に摂取する人がいますが、その過剰摂取で下痢になることが少なくありません」

 こう言うのは、腸内細菌に詳しい東京医科歯科大名誉教授の藤田紘一郎氏だ。

 ヨーグルトでおなじみの乳酸菌やビフィズス菌が善玉菌で、健康なら全体の20%。大腸菌やウェルシュ菌などが悪玉菌で、大体10%。残りの70%は日和見菌で、善玉にも悪玉にもなる。

 IBSの患者数は1200万人と推計され、男性に多い下痢型が29%、女性に多い便秘型が24%で、残りは混合型。これらの人は日和見菌を含めて悪玉菌が優位になっているという。崩れたバランスを改善する食品としてFODMAP食が注目されている。

 厄介な下痢を食事で改善するにはどうするか。藤田氏に聞いた。

「FODMAP食は、発酵性の糖質のことです。『O』はオリゴ糖、『D』は二糖類、『M』は単糖類、『P』はポリオール。オリゴ糖は豆類や小麦、玉ネギ、二糖類は牛乳やヨーグルト、単糖類は蜂蜜や果物、ポリオールは人工甘味料に含まれます。下痢の人がこれらを取り過ぎると、過剰な善玉菌が小腸から大腸に移行し、大腸が刺激されて下痢になったり、お腹がゴロゴロしたりするのです」

 ちなみに「F」は発酵性を意味する英語の頭文字で、「A」は「and」だ。2014年に提唱されたFODMAP食は世界中に広まり、藤田氏も専門家として実験したという。

「私も昨年の秋、朝晩にヨーグルトを取って下痢に悩まされました。実はFODMAP食には、高FODMAP食と低FODMAP食があります。米国の研究で、高FODMAP食を取り過ぎると、善玉菌の過剰で下痢が悪化することが分かったのです。善玉菌といえども取り過ぎは禁物。低FODMAP食に変更すれば、1~2カ月ほどで症状は改善します。私も1カ月半ほどでよくなりました」

 高FODMAP食と低FODMAP食のうち、主な食品は〈別欄〉の通り。こうしてみると、「善玉菌を増やすためのヨーグルト」「朝ご飯はキムチか納豆」といった“健康常識”が間違いだったように思える。

「間違いではありませんよ。悪玉菌が多い人が、その改善に摂取するのはいい。しかし、過剰摂取で善玉菌が増え過ぎるのは問題です。たとえば、白菜は善玉菌のエサとなる食物繊維が豊富。それが原材料のキムチは、発酵によって善玉菌活性がさらに増し、過剰な力が悪さをする恐れがあるということ。私も今は納豆もヨーグルトも取っていますから」

 気になる人は、低FODMAP食を試してみるといい。

◇高FODMAP食
 牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、プロセスチーズ、カッテージチーズ、クリームチーズなど。
 納豆、豆類、玉ネギ、ネギ、ニラ、ニンニク、ゴボウ、キムチ、サツマイモ、マッシュルーム、カリフラワーなど。
 ラーメン、パスタ、うどん、そば、ピザ、お好み焼き、大麦、小麦、パン、小麦粉など。

◇低FODMAP食
 バター、ラクトフリー製品、カマンベールチーズ、モッツァレラチーズ、パルメザンチーズなど。
 ナス、トマト、ニンジン、ピーマン、ホウレンソウ、カボチャ、ジャガイモ、レタス、タケノコ、白菜、キャベツなど。
 米、シリアル、ビーフン、グルテンフリー食品、米粉など。

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