新年度が始まり心機一転、仕事に精を出そうという人もいる一方、“うつ社員”も増えているという。厚生労働省の最新データ「過労死等の労災補償状況」(2017年度)によれば、精神疾患による労災件数は年々増加しており、17年度では過去最高の1732件。前年度より150件近い増加だ。
職場の環境の改善は欠かせないが、メンタル疾患には自己防衛も大切。中でも、食事が重要な役割を担っている。
「精神的な不調を抱える患者さんの食生活を見ていると、必要な栄養素が足りていないことが多いのです」
こう話すのは、精神科医で「うつ消しごはん」(方丈社)の著者、藤川徳美氏だ。どういうことか。藤川氏に聞いた。
「特にタンパク質不足が深刻です。タンパク質は、心を落ち着かせる働きのあるセロトニンや、喜びを感じさせるドーパミンなどの神経伝達物質の原料となる栄養素。抑うつ気分というのは、神経伝達物質が不足することから起こりますが、原因はタンパク質不足であることが多いのです」
さらに、発達障害やパニック障害などでうまく日常生活が送れないという人も、栄養の見直しで楽になることがあるそうだ。
「それぞれの症状は薬で治療しますが、食事の見直しは最重要。注意欠陥多動性障害(ADHD)の子どもでは、高タンパク・低糖質食に加えてプロテイン・鉄・ビタミンのサプリメントで状態が改善。パニック障害の方は、高タンパク・低糖質食の導入と鉄不足を改善することで症状が和らぎ、減薬することができています」
子どもの起立性調節障害や学習障害(LD)なども、タンパク質や鉄が足りない半面、糖質は過剰なことが多いという。
では、日常からどのようなものを食べていればいいのか。
「タンパク質の摂取には、毎日200グラムの肉が必要。鉄分も豊富に含まれる牛や豚、ラムなど赤身の肉がおすすめです。卵も1日3個以上。白身は生だとビタミンの吸収を阻害する成分が含まれるため、加熱して食べるといいでしょう」
肉をそんなに食べられないという人は、プロテインや鉄サプリで補うのがベター。そうやって、症状の改善やうつの予防を心掛けるのだ。
「栄養状態が悪いと、柔軟な思考ができなくなり、落ち込みやすくなります。職場環境や対人関係に冷静に対応するためにも、精神の健康は重要。その土台づくりに適切な食事が必要なのです」
今日から食事を見直そう。
街中の疑問